高木菜那が金メダル 新種目マススタート初代女王
2018年2月25日
女子マススタートで金メダルを獲得し日の丸を背に笑顔の高木菜那=江陵で(田中久雄撮影) |
新種目の女子マススタートが江陵オーバルで行われ、高木菜那(25)=日本電産サンキョー=が優勝し、21日の団体追い抜きに続く金メダルを獲得した。日本の女子が同一大会で「金」2個を手にするのは、夏季五輪を含めて初めて。男子は1998年長野大会でスキー・ジャンプの船木和喜がラージヒルと団体で獲得している。日本の金メダルは今大会4個目で、冬季通算14個目。今大会のメダル数は最多を更新する13個となった。
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小さな小さな女王が、高々と両腕を突き上げた。最後の1周、1つ目のカーブで3番手につけた高木菜は、直線で一気に2番手へ。さらに最後のカーブを出たところで、懸命に足を前へと押し出した。
「ここで行かなきゃいつ行くんだ」。ラストスパートで競り勝ち、ゴールイン。両手でガッツポーズし「やった〜」と叫んだ。
身長は155センチ。集団の中ではひときわ小柄だ。もっと背が高ければと思ったことは、1度や2度ではない。それでも「この身長で戦っていかなければいけない」。マススタートでは「間をシュシュシュっていくのは小さい方が有利」と信じて取り組んできた。
今シーズンは、古傷である右膝の痛みとの闘いでもあった。シーズン前のトレーニング期は状態を見極めながらの追い込み。昨年10月の氷上練習の時期でさえ、別メニューでの調整だった。
昨年末の全日本選手権もテーピングをして出場。「完璧に治っているわけじゃない」と語っていたが、夢舞台で奇跡は起きた。「支えてくれた人のおかげで痛みなく滑り切れた。ここまでちゃんと滑れることは想像していなかった」。会心のレースだった。
今大会3色のメダルを獲得した妹・美帆と比べられ続けた競技人生。振り返れば葛藤も多く、ねたんだ時期もあった。しかし、今は違う。「妹を誇りにも思うし、2つのメダルが刺激になった。(自分は)個人種目では戦えなかったけれど、新しい種目で結果を残せた。美帆だけじゃなくて、菜那もいるんだぞと見せられた」と最高の笑顔で語った。
ソチ五輪後に始まったこの種目で、射止めた初代女王の座。「頭を使うし、見ていて面白い。技術も体力も大切だけど、つく位置やレース展開を落ち着いてみられる力も必要。楽しい種目だと思う」。最高の舞台で、菜那の才能は花開いた。 (國島紗希)