女子団体追い抜き「金」 美帆、メダル全色コンプリート
2018年2月22日
女子団体追い抜きで金メダルを獲得し、日の丸を手にリンクを回る(左から)菊池、佐藤、高木菜、高木美=江陵で(田中久雄撮影) |
女子団体追い抜きが行われ、日本がこの種目で初の金メダルを獲得した。準決勝でカナダ、決勝でオランダを下した。過去最高は2010年バンクーバー大会の銀。高木美帆(23)=日体大助手=は1500メートルの銀、1000メートルの銅に続くメダル。冬季五輪の一大会での3メダル獲得は、1998年長野大会のスキージャンプの船木和喜(金2、銀1)に並ぶ日本選手最多記録。日本勢は長野大会を超えて史上最多となるメダル11個(金3、銀5、銅3)とした。
世界最高のスケーター、高木美が率いる3本の矢がメダル軍団を打ちのめした。日本が勝った。スケート王国オランダを堂々と破った。勝利を確信した高木美が両手を広げると、続くようにガッツポーズを繰り出していく。高木美、佐藤、高木菜。準決勝で滑った菊池もいる。4人が日本に新たな歴史を刻み込んだ。
「オランダに勝ったと思って。渾身(こんしん)のガッツポーズにすべてが表れている。今までの中で一番いいレースができた」。高木美の声が弾んだ。
やはり高木美はエースだった。2周目までは日本がリードしたが、3、4周目は今大会のメダリスト3人をそろえたオランダがラップを奪い返す。劣勢を盛り返したのが高木美だ。6周を3人が交代して先頭を引っ張る団体追い抜き。高木美は最初の1・75周と最後の1・75周を滑る。5周目で再びリードを奪い返すと、最終周でリードを広げてオランダが1回戦で記録した五輪新を更新する2分53秒89でフィニッシュした。
「クロワッサン事件」が起きたのは2015年夏、帯広市内のホテルの朝食会場だった。「脂の塊を何で食べるんだ」。怒号を発したのはナショナルチームのヘッドコーチに就任したばかりのヨハン・デビット。スケート王国でも実績を残してきたオランダ人コーチが最初に行ったのが肉体改造。だからバターがたっぷり入ったクロワッサンを食べようとした選手を制止した。
高木美が言う。「日本チームが成長した大きな理由はヨハンにある」と。16年3月の世界選手権、タイトルを総なめにしたブスト(オランダ)を見た高木美がつぶやいた。
「あんな選手に勝てるわけがない」
それを聞いたデビットコーチは高木美に言った。「何で同じ人間なのにそう思うんだ。オレなら『自分にもできる』と思うよ」。この言葉で、高木美の闘志に火がついた。どんなつらい練習にも食らいついていった。そしてこの日、同じエースとして戦ったブストに勝ちきった。
「最後の2周で自分の足が止まったら勝てないと思っていた。でも2回目の先頭に回ってくる前に2人がいい滑りをしていたので、体力も最小限に抑えられた」
これで今大会は金銀銅のコンプリート。一大会でのコンプリートは日本の冬季大会史上初の快挙だ。「このメンバーで取れた金メダルがうれしい」。信頼する仲間とともにつかんだ世界一だからこそ、どこまでも晴れやかだった。 (兼田康次)