日本、一糸乱れず「金」 宿敵オランダを圧倒

2018年2月22日

金メダルを獲得した(左から)高木美帆、佐藤綾乃、高木菜那の滑り=北波智史撮影

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 団体追い抜きで高木美帆(日体大助手)、高木菜那(日本電産サンキョー)、佐藤綾乃(高崎健康福祉大)の日本女子は前回覇者オランダとの決勝を2分53秒89の五輪新記録で制して金メダルを獲得した。

 同種目でのメダルは2位だった2010年バンクーバー五輪以来。今大会のスピード勢のメダルは5個となり、1大会最多だった92年アルベールビル五輪の4個を超えた。高木美は1500メートルの銀、1000メートルの銅に続き、今大会三つ目のメダル。

 カナダとの準決勝は高木姉妹と菊池彩花(富士急)で組み、2分58秒94で突破した。

 冬季五輪で、日本の兄弟や姉妹がメダルを獲得したのは初めて。

 ウイリアムソン師円(日本電産サンキョー)、一戸誠太郎(信州大)、土屋良輔(メモリード)の日本男子は5位。5、6位決定戦で、3分41秒62で遅れてゴールしたが、相手のイタリアが失格となった。ノルウェーが初優勝。 (共同)

 最後はエースに託した。残り2周すぎで2度目の先頭に立った高木美が、直前まで先頭だった高木菜でつくった追い上げムードを受け継いだ。

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 スタート直後の先頭と合わせ、計3周半の大仕事だったが、「2度目の先頭の前に佐藤と姉がいいリズムで引っ張ってくれて、体力を最小限に抑えられた」と余力は十分。スタンドで揺らめく日の丸を背に「前へ、前へ」とぐいぐいと引っ張り、佐藤と高木菜も懸命に食らい付いた。

 中盤でオランダに最大0秒45つけられた差を残り1周を告げる鐘とともに逆転。レース前に控えの菊池が「世界で一番美しいラインを描こう」と鼓舞した通り、3人の隊列は最後まで崩れなかった。

 最終周でさらに引き離して差を1秒59に広げた。「みんなだったから取れた金メダル」と高木美。隊列同様に3人ほぼ同時にガッツポーズを決めた。「個人で勝てなくても、チームで勝てることが証明できた」と最年少の21歳、佐藤は胸を張った。

 菊池を含めた4人は所属先の垣根を越えて活動するナショナルチームに参加し、年間のほとんどを一緒に過ごしてきた。有力選手がプロクラブに散らばり、団体の練習ができないオランダに対し、隊列や先頭交代の精度を磨いた。

 2時間前の準決勝で佐藤を温存し、菊池を起用して勝ち抜いた。決勝では準決勝の疲れを考慮し、高木菜が先頭に立つ距離をふだんより半周短い1周にし、佐藤の距離を1周から1周半に増やした。

 ヨハン・デビットコーチが練る緻密な戦略は4人が常に同じ練習を積み、同じ基準や日程感覚で体調管理をしてきたからこそ見定められた。

 「団体にかけてきた思い、練習量は絶対勝っている自信はあった」と高木菜。「チームジャパン」で積み上げた日々の結晶が4人の涙となってほおをつたった。 (原田遼)

<高木 美帆(たかぎ・みほ、日体大助手)> 北海道・札内中3年で10年バンクーバー五輪出場。今大会1500メートルで銀、1000メートルで銅メダル獲得。1500メートル、3000メートルの日本記録保持者。昨季世界選手権総合3位。北海道・帯広南商高、日体大出。164センチ、58キロ。23歳。北海道出身。

<高木 菜那(たかぎ・なな、日本電産サンキョー)> 14年ソチ五輪1500メートルで32位、団体追い抜きで4位。今大会は5000メートルで12位だった。17年世界距離別選手権マススタートで2位。北海道・帯広南商高出、日本電産サンキョー。155センチ、48キロ。25歳。北海道出身。

<佐藤 綾乃(さとう・あやの、高崎健康福祉大)> 五輪初出場。マススタートで16年世界ジュニア選手権、今季W杯第1戦優勝。今大会は3000メートルで8位入賞。北海道・釧路北陽高出。157センチ、56キロ。21歳。北海道出身。

<菊池 彩花(きくち・あやか、富士急)> 14年ソチ冬季五輪1500メートルで31位、団体追い抜きで4位。今大会は3000メートルで19位、1500メートルで16位。5姉妹の次女で妹の悠希、純礼はショートトラックの今大会代表。長野・佐久長聖高出。170センチ、61キロ。30歳。長野県出身。 

 (共同)

中日新聞 東京新聞

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