美帆、メダルコンプリートだ 団体追い抜き「金」で達成

2018年2月20日

女子団体追い抜き1回戦滑走する(手前から)高木美、佐藤、高木菜=江陵で(田中久雄撮影)

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 日本女子、尻上がりの快走でメダル王手! 女子団体追い抜き(パシュート)1回戦が江陵オーバルで行われ、世界記録を持つ高木美帆(23)=日体大助手、高木菜那(25)=日本電産サンキョー、佐藤綾乃(21)=高崎健康福祉大=の日本は2分56秒09の2位で勝ち上がり、21日の準決勝で3位のカナダと対戦することが決まった。もう一つの準決勝は五輪新記録の2分55秒61を出したオランダと米国の組み合わせ。

 思わぬアクシデントから偉業への道が幕を開けた。「待って、待って、待って」。スタート直後、3番目を滑っていた高木菜からの声に高木美が振り返る。当然、減速した3人は思うように加速できなかった。フィニッシュラインを通過したタイムは2分56秒09。五輪新を記録したオランダの2分55秒61には届かず、2位で準決勝進出を決めた。

 「私のミス。最初の2、3歩で大きな空回りというか足が抜けた。(高木)美帆さんに追いつけず、それによって(高木)菜那さんも離れた」。こう頭をかいたのはスタート直後、2番手の佐藤だ。今回の1回戦は相手との勝負ではなく、上位4チームが21日の準決勝に進出するためのタイムトライアル。致命的な出遅れではあったが、誰もが冷静だった。2周目以降は、29秒05だった5周目以外は1周28秒台を刻んで、3位と対決する2位のタイムでゴールした。

 同種目で今季W杯3戦全勝で3戦連続世界新。金メダルの大本命だったはずの女子団体追い抜きは、開幕後に様相が一変した。オランダ勢が女子3000メートルの表彰台を独占して、女子1500メートルは金と銅。前回ソチ五輪で女子6種目中半数を制したスケート大国が本気になった。この日のオランダのメンバーは1500メートル金のブストを含めて3人とも今大会のメダリスト。W杯とは別のチームになって大舞台に臨んでいた。

 「オランダのタイムを見たときに、ここに合わせるのはさすがだなと。昨年と一昨年の(世界)距離別で勝てていないのを改めて思い出した」

 こう振り返ったのは6周中3・5周を先頭で引っ張る高木美だ。1500メートルで銀、1000メートルで銅のエースが金メダルを獲得すれば一大会での金銀銅コンプリート。複数大会ではあっても、一大会でのコンプリートは冬季五輪の日本勢としては初の快挙だ。そんな中、大きな敵が出現したが、悲観してはいなかった。

 「あのタイムは自分たちも出せる。悲観的になっていないけど、向こうは本番に強いということを忘れてはいけない。ただ、パシュート(団体追い抜き)にかけた時間は他のどの国より多くて質が高い。自信を持って次のレースに向かっていきたい」と高木美。オランダは前回ソチ五輪の王者で世界距離別も昨季まで2連覇中。間違いなく強い。だが、この日は出遅れながら0秒48差。3人が一糸乱れぬフォームで滑り抜く技術があれば、カナダと戦う準決勝と同日に行われる決勝でも勝ちきれる。 (兼田康次)

◆冬季「全色制覇」は清水と原田

 冬季の個人種目で過去に「メダル全色コンプリート」を達成したのは、スピードスケート男子の清水宏保のみ。1998年長野大会の500メートルで同競技日本初の金メダルを獲得すると、1000メートルでも健闘して銅メダル。母国五輪で一躍ヒーローとなった。

 その清水は、2002年ソルトレークシティー大会で500メートルの連覇に挑戦。しかし、2本合計でC・フィッツランドルフ(米国)にわずか0秒03及ばずに銀メダル。望まない形で「全色獲得」となった。当時の清水は、重度の腰痛を痛み止め薬で抑えての出陣。腰が万全なら、連覇と世界新の同時達成も夢ではなかった。

 団体を含めると、スキージャンプの原田雅彦が94年リレハンメル大会の団体の銀、98年長野大会の団体の金、個人ラージヒル銅で「全色」を達成している。94年の団体は原田が“世紀の失敗ジャンプ”を飛んでV逸。これがなければ、全色そろうこともなかった。

 「コンプリート超え」は、長野大会のスキージャンプ・船木和喜。個人ラージヒルと団体で金、個人ノーマルヒルで銀。出場した全種目でメダルを得た。一方、コンプリートに1個及ばなかったのはフリースタイルスキー・モーグル女子の里谷多英。長野大会で日本女子史上初の金を獲得し、次のソルトレークシティー大会でも4位のカナダ選手と0・01点差の銅メダル。モーグルは団体戦がなく、一大会で1種目しか出場機会がないことを考えれば、その偉業は他のコンプリーターに勝るとも劣らない。 (武藤康弘)

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