故郷の頂で足腰鍛える 小平が幼少時、父と駆けた

2018年2月19日

父の安彦さん(左)と南アルプスの仙丈ケ岳に登った12歳のころの小平奈緒選手(家族提供)

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小平奈緒選手に手を振る父安彦さんと母光子さん=18日、江陵で(共同)

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 【江陵(カンヌン)=安福晋一郎】平昌五輪スピードスケート女子500メートルを驚異的速さで制した小平奈緒選手(31)=相沢病院。十九日の記者会見では「500メートルの世界記録を塗り替えたい」と新たな目標を語った。幼いころ、父親と長野県の南アルプスや八ケ岳を駆け巡った少女の“頂”への挑戦はまだ終わらない。

 八ケ岳のふもとに位置する長野県茅野(ちの)市で生まれ育った。父安彦さん(62)は小学校に入学する前の娘を登山に誘った。「思春期になると(反抗期で)避けられるから、その前に絆を深めておこうかと」。三歳から始めていたスケートのためではなく、父親としての“計算”だった。

 八ケ岳は標高二千六百メートル前後の頂が連なる。週末の朝に二人で登り、昼食までには家に戻った。三千メートル級の南アルプスの仙丈ケ岳や富士山も踏破した。

 小平選手は登りも下りも、走って他の登山客を抜き去った。石や岩の上をぴょんぴょんと跳び、三歩先を読みながら進んだ。石がぐらついたら次の石に乗る。「スケートでバランスを取るのに似ている」と安彦さんは感心して見ていた。そんな父娘の登山交流は中学生になるまで続いた。

 小学五年の時、地元で開かれた長野五輪以来、小平選手にははっきりと目標ができていた。小学校の卒業文集に「五輪選手になる」と書いた。安彦さんは「『なりたい』ではなく『なる』。もう親と一緒にいる時期ではない」と指導者を探し、競技一色の生活へと娘を後押しした。

 夜中までスケートの練習に打ち込み、高校では実家を出て下宿やアパートで一人暮らし。結局、忙しくて反抗期もなかった。

 試合会場で安彦さんらが見守る中、36秒94と五輪記録を0秒34も更新するタイムでつかんだ金メダル。圧倒的な強さを身に付けるまで、さまざまな苦労を重ねたが、「良かった時もダメだった時も、常に認めてくれていた。家族に感謝したい」と笑った。

中日新聞 東京新聞

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