小5で心酔、恩師と頂点 「すべて報われた気持ち」

2018年2月19日

金メダルを獲得し、結城匡啓コーチ(右)と喜び合う小平奈緒選手=18日、江陵で(潟沼義樹撮影)

写真

 ただ一人の36秒台。圧倒的なスピードで滑った新女王は、信州大教授の結城匡啓(まさひろ)コーチ(52)と日の丸を掲げた。三十一歳の小平選手の躍進には、結城コーチとともに歩んできた道のりがあった。

 二年間のオランダ留学から帰国した二年前の春、体は満身創痍(そうい)だった。現地で負った右足捻挫で筋力も落ちていた。「まずい」と感じた結城コーチと二人で練り上げたのが、平昌五輪に照準を合わせた「二十二カ月計画」。三十歳に近い年齢を考慮しつつ、治療と並行して、あえて男子選手と同じ量の厳しいトレーニングを課した。

 オランダで学んだ「怒った猫」を連想させる肩を上げたスタート姿勢。結城コーチは「肩を上げること自体ではなく、その姿勢を取ることで股関節を下に押し付け、下半身を低くすることに意味がある」と指摘し、より効率的な姿勢をつくり上げた。一つずつ練習に意味を持たせ、実践した。

 結城コーチを知ったのは、小学五年で長野五輪を見た時。金メダルに輝いた清水宏保さんを指導する姿に、「将来、この人に教わる」と心に決めた。

 信州大を目指し、必死に勉強した。一般入試前日に夕食を吐き出すほど「人生で最大に緊張した」という。そのかいあって合格。出会いは、世界トップへの道につながった。

 「いろんな指導者を見てきたつもりですが、世界一の指導者」と小平選手。金メダルが決まると、日の丸を手に駆け寄る結城コーチとハイタッチを交わした。

 二十二カ月間の歩みを「地図を描いてその通り来たのではなかった。修正しながらだった」と振り返った結城コーチ。二人で目指してきた頂点に「すべて報われたような気持ち」と小平選手。最高の栄誉を分かち合った。

 (安福晋一郎)

中日新聞 東京新聞

※ご利用のブラウザのバージョンが古い場合、ページ等が正常に表示されない場合がございます。

Search | 検索