重圧はねのけ「持ち味出し切れた」 小平

2018年2月19日

 だれよりも速く、ゴールラインを駆け抜けた。十八日のスピードスケート女子500メートルで、日本女子初の金メダルを獲得した小平奈緒選手(31)=相沢病院。大本命と言われた重圧をはねのけて、五輪新の速さで滑ってみせた。長野五輪をみて、あこがれた世界の頂点。「周りが何も見えないくらいうれしい」。地元は「最高の滑りだ」と感激に包まれた。

 五輪新のタイムを確認すると滑りに納得したように、ゆっくりと両腕を広げてガッツポーズをつくった。大歓声の中、客席の応援に顔を向けると、ずっと厳しかった表情がついに緩んだ。込み上げてくるものを抑えるように「良くない時も、必ず誰かが認めてくれた。それが今日、報われた」。積み重ねてきた努力が言葉ににじみ、目には涙が光った。

 スタートは得意のインから。下からにらみつけるように前を見て、号砲と同時に加速すると、そのままスピードに乗る。

 金メダルの期待を一身に背負って乗り込んだリンクだった。世界記録を持つ十四日の1000メートルは、頂点に惜しくも届かず銀メダルに終わった。悔しさの入り交じった笑顔で「500メートルにつながる銀メダルになった」と前を向き、快挙につなげた。

 この日は、重圧から解き放たれたような晴れやかな表情も浮かべた。日の丸を手に、ゆっくりとコースを回り、スタンドにも手を振った。「自分の持ち味を出し切れた。躍動感あふれるレースができた」。日本が誇る短距離のエースが、真の女王になった。

 (江陵(カンヌン)・安福晋一郎)

中日新聞 東京新聞

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