小平 顔晴(がんば)った 「つらくても笑顔忘れちゃいけない」

2018年2月19日

女子500メートルで金メダルを獲得し、声援に応える小平選手=18日、江陵で(田中久雄撮影)

写真

 平昌(ピョンチャン)冬季五輪第十日の十八日、小平奈緒選手(31)=相沢病院=が得意の500メートルで日本スピードスケート女子で史上初となる金メダルを獲得した。「周りが何も見えなくなるくらいうれしかった」。三度目の五輪で、十代の時から抱いていた夢をついにかなえた。

 小平選手が、大切にしてきた言葉がある。「顔晴(がんばれ)」。長野県の伊那西高校三年の時に書いた作文のタイトルだ。

 中学二年で高校生らを抑えて全日本ジュニア選手権スプリントを制し、頭角を現していた小平選手。だが高校二年の冬、今までにないスランプに陥った。そのときの経験をつづった。

 「不安と焦り、悔しい思いを何度もした。スケートの楽しさを忘れてしまうくらいつらくて、自信が持てない自分が嫌いになった。結果が出ないから大好きなはずのスケートも楽しめるわけなくて、氷上で『笑う』ということがなくなった」

 夏の厳しい練習に耐え、すでに頑張ってきただけに、当時は周囲から「頑張れ」と言われると苦しかった。でも「頑張らなくていいんだよ」という言葉を聞いてもふに落ちず、前に進める気がしなかったという小平選手。そんなとき、ある北海道のコーチにもらった言葉が「顔晴」だった。

 「本当のガンバレは顔が晴れたこと。つらくても笑顔は忘れちゃいけない」

 「頑張れ」という言葉に疲れ、悔いばかりが残る毎日を過ごしていると感じていた。幼い頃は笑っていられたのに、いつの間にか下を向くようになっていた小平選手を救った言葉だった。作文はこう締めくくった。

 「笑顔でいること。良い記録を出すことより、何より笑顔で顔晴(がんば)ることが、今の私にできる、感謝の気持ち、恩返しだと思う」

 小平選手は高校三年の冬、全日本ジュニア選手権スプリントを四年ぶりに制覇した。

 高校卒業の時、クラスで作った冊子に好きな色は「金」、宝物は「スケート靴」と書いた。夢は「五輪で金メダル(世界新記録で)」、願いがかなうなら「五輪で金メダルが取れればそれだけで充分です」。長年の念願をかなえ、五輪の表彰台で頂点に立った。 (共同)

中日新聞 東京新聞

※ご利用のブラウザのバージョンが古い場合、ページ等が正常に表示されない場合がございます。

Search | 検索