500メートルで小平が金 スピード女子初、五輪新

2018年2月19日

女子500メートルで金メダルを獲得した小平奈緒=18日、江陵で(潟沼義樹撮影)

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 【平昌(ピョンチャン)=本社五輪取材団】平昌冬季五輪は第十日の十八日、スピードスケート女子500メートルで小平奈緒(31)=相沢病院=が36秒94の五輪新記録で初優勝した。スピードスケートで日本選手の金メダルは、一九九八年長野五輪男子500メートルの清水宏保以来で、女子では初めて。

 今大会では、フィギュア男子の羽生結弦(ゆづる)(ANA)に続いて日本の金メダルは二個目となり、日本のメダル獲得数は過去最多だった長野五輪の十に並んだ。

 小平は、1000メートルの銀に続いて今大会二個目、自身三個目のメダル獲得。郷亜里砂(イヨテツク)は八位だった。

 カーリング男子一次リーグは、SC軽井沢クが米国に快勝したが、スウェーデンに敗れ、通算三勝三敗となった。

 アイスホッケー女子の日本は、五〜八位決定予備戦でスウェーデンを延長戦の末に2−1で破り、二十日の五、六位決定戦に進んだ。

 フリースタイルスキーの男子スロープスタイルでは山本泰成(尾瀬ク)が予選敗退した。

 アルペンスキーの男子大回転では、石井智也(ゴールドウイン)が三十位だった。

◆長野発、究めた最速

 腕の一振り、脚の一蹴りにスケート人生が詰まっていた。息を切らせて見上げたタイムは「36秒94」。標高の低いリンクで挑み続けた異次元の36秒台に、「本当に現実になったんだ」とかつてない興奮が体を突き抜けた。

 「ウオー」という満員の観客のどよめきとともに、クールな女王が珍しく両腕を掲げ、喜びをあらわにした。優勝が確定すると、泣き崩れる地元の李相花(イサンファ)をそっと抱き寄せる。インタビューでは「最初から集中して自分の持ち味を出し切れた。躍動感あふれるレースができた」と晴れやかに語った。

 一九九八年長野五輪。小学五年の小平は清水宏保さんが金メダルに輝いた男子500メートルが心に焼きついた。「地元の人々が涙を流したり、笑顔で喜んだりしていた。私も人々の心を動かせる選手になりたい。鮮明なビジョン(展望)が見えた」

 地元に専門的な指導者は少ない。探究心に火が付いた。清水さんのレースをビデオで何度も見直した。「ロケットスタートもまねしたけど、足の動きが速すぎてできなかった」。ビデオテープは中学時代に擦り切れて見られなくなった。

 県内で大会があれば、父にねだって車で行き、「(五輪メダリストの)堀井学選手は大きく腕を使っているな」と観察した。信州大ではトップ選手のカーブ技術をテーマにして、遠心力に負けずに重心を前に運ぶ技術を研究した。

 二〇一四年ソチ五輪後のオランダ留学で本場の科学的な指導に触れ、一季目でW杯の総合優勝。一六年春に帰国後は「日本の練習にもたくさんいいところがある」と、夏は競輪用バンクを使った自転車練習に励み、短距離に必要なパワーと心肺機能を強化。縁を伝って古武術を習い、無駄な力を使わずに体を動かすすべを身に付けた。

 学び、実行してきた経験すべてが力になった。金メダルよりも楽しみにしていたのは「ゴール後」の景色。スタンドを見渡したけど、「涙でかすんで見えなかった」。(江陵(カンヌン)・原田遼)

中日新聞 東京新聞

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