宇野、挑戦者の勲章 2人のコーチと一歩ずつ

2018年2月18日

男子フリーの演技を終えた宇野昌磨選手(手前)を抱き寄せる樋口美穂子コーチ=17日、江陵で(田中久雄撮影)

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◆樋口さん感涙

 後半のジャンプの着地をどうにかこらえて演技をまとめ、戻ってきた宇野昌磨選手(トヨタ自動車)を、樋口美穂子コーチ(48)が抱き締めた。「練習してきたたまものだね」。目に涙が光っていた。

 フリー曲のオペラ「トゥーランドット」に合わせて優雅に舞った振り付けは、樋口コーチが宇野選手とともに築き上げた自信作だ。コーチと振付師。通常、トップ選手はそれぞれの専門家が手がけるが、樋口コーチは両者を担う。

 名古屋市中区の名古屋スポーツセンター(大須スケートリンク)で幼かった宇野選手の滑りをみて「光るものがある」と思った。その予感は当たった。体格が小さく、ジャンプをなかなか覚えられない時期もあったが、愚直に練習する宇野選手は「しかることがない」。山田満知子コーチと温かく見守ってきた。

 五輪銀メダリストの伊藤みどりさんと同い年で、共に幼少期から山田コーチの下で練習を重ねた。ジャンプが得意な伊藤さんに対し、ステップがうまかった。二十歳ごろに引退し、山田コーチに「手伝いたい」と申し出て指導者の道へ。指導方法を学びつつ、一流の振付師に学ぶため海外にも出向いた。

 ソチ五輪以降、山田コーチに代わり、教え子の国際試合に樋口コーチが行くことが増えた。山田コーチは「立派になって進んでいる。良い世代交代ができれば」と信頼を寄せる。

 「表彰台の上に乗せてあげたかった。試合を見て泣いたのは初めてかな」と試合後に笑顔を見せた樋口コーチ。「でも、これからも頑張っていかないと、次は金どころか表彰台にも乗れない」。勝利に酔いしれる暇はまだない。

 (江陵・安福晋一郎)

◆山田さん笑顔

銀メダルの宇野選手の演技を「本当に良かった」とたたえる山田満知子コーチ=17日午後、愛知県豊田市の中京大豊田キャンパスで

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 「うわーっと抱き締めて喜びたい」。宇野昌磨選手を幼いころから指導してきた山田満知子コーチ(74)は十七日、宇野選手が在籍する中京大豊田キャンパス(愛知県豊田市)で報道陣の取材に応じ、満面の笑みで快挙を喜んだ。

 「プレッシャーの中でよくあれだけの演技ができた」という演技で、同じく教え子の伊藤みどりさん、浅田真央さんに続く銀メダル。「昌磨の小さいころを思えば、えーっという感じ」と驚きながら、「小柄だけに、表現力など人と違うことを武器にしようと努力してきたかいがあった」と成長をたたえた。

 日本中が祝福した銀メダル。大会での順位より「人から愛される人間になってほしい」と心掛けてきたといい、「昌磨もみんなから温かく応援してもらえる人間に育った。コーチを続けてきて良かった」としみじみ語った。

中日新聞 東京新聞

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