<村上佳菜子レポート>羽生、最後まで滑りに伸び 体力面心配なかった

2018年2月18日

男子フリーの演技を終え、氷に触れる羽生結弦(代表撮影)

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◆疲れると重心上がり、氷を押せなくなる

 期待していた通りのワン・ツーフィニッシュで、私も幸せな気分です。羽生結弦選手はけが明けで体力面の心配がありましたが、それを全く感じさせない演技でした。「疲れはない」と感じたのは、スケーティングのつなぎの部分です。疲れてしまうと重心が高くなってうまく氷を押せなくなり、滑りにあまりスピードが出なくなるのですが、羽生選手は最後まで伸びがありました。

 スピードを生かした美しいジャンプをするのが羽生選手の魅力です。冒頭の4回転サルコーは、助走のスピードと跳んだ後のスピードがほぼ変わらないくらい流れに乗っていました。助走のスピード、足で踏ん張る強さ、体を回転させるタイミング、この3つがしっかりかみ合っていましたので、出来栄え点でも加点がもらえました。

 最後の3回転ルッツは、乱れはしましたが、そこまでほぼノーミスでした。演技全体に跳ぶぞという強い気持ちが表れていました。大けがを乗り越え、ぶっつけ本番での五輪で、ほぼパーフェクトな演技ができる。普通の選手では考えられない強さです。

◆後半4回転2度が効いた昌磨逆転銀

 宇野昌磨選手の演技はとても難しい状況でした。直前の2選手の演技で、観客席も盛り上がっていて、ましてや最終滑走でした。でも、最初のポーズの後の表情で、目がかっと開いた瞬間、「スイッチが入った」と思いました。

 冒頭の4回転ループは、踏みきりの瞬間、上半身と下半身のタイミングが合わなくて軸が外にずれて転倒してしまいました。すぐに気持ちを切り替えて、しっかり修正しました。羽生選手もそうでしたが、後半の連続ジャンプが単独になったところもありましたが、その後にしっかりリカバリーできていました。ちゃんと練習してきたからこそのリカバリーだと思います。SP2位のフェルナンデス選手を逆転できたのは、後半に2度4回転を入れたことが大きかったと思います。その分ポイントで上回ることができました。

 このワン・ツーフィニッシュは、日本人選手の挑戦し続ける姿勢の象徴です。羽生選手はソチ五輪で金メダルを取っても、この4年間挑戦し続けました。そして宇野選手もその後ろ姿を見て、努力を続けてきました。日本人選手の素晴らしさを世界中に広めてくれたと思います。

 (プロフィギュアスケーター、ソチ五輪代表)

中スポ 東京中日スポーツ

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