羽生、耐えて新境地 終盤息切れ…「体が覚えていた」

2018年2月18日

男子フリー金メダルを獲得した羽生結弦の演技=共同

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 氷を捉えたのはエッジのつま先わずか数センチだった。最後の3回転ルッツで軸がぶれた羽生は、けが明けの右足で懸命にこらえた。力を込めてかかとを踏み込み、左足も前に踏みだす。「右足が頑張ってくれた」と転倒を回避すると、固唾(かたず)をのんで見守っていた観客が発する絶叫が会場にこだました。

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 「4回転も3回転も全て何年もやってきている。体が覚えていた」と4回転2種類4本を含む全八つのジャンプを予定通りに完遂した。最後は乱れこそしたが、序盤の4回転サルコーと4回転トーループで満点の「3」を得るなど高い出来栄え点(GOE)を加算し続けた羽生には十分な勝利への貯金があった。

 119日ぶりのフリー演技。「何よりも勝ちたい。勝たなければ意味がない」。この日朝、難易度の高い4回転ルッツと4回転ループを回避する構成を決めた。4回転の本数もけがをする前の5本から1本減らした。基礎点では宇野、金博洋らを下回ってでも、成功率の高さとGOEの加点を選んだ。「一番本気を出せるプログラム」を信念とする男が選んだ現実路線。結果的に最後のジャンプのふらつきが示す通り、休養明けの体には限界ぎりぎりだった。

 それでも2015年グランプリファイナルで世界歴代最高得点を挙げた時よりも4回転の数は1本多い。「スケートができなかった期間があったからこそ、作戦を学び、勝つためにここへ来られた」。挑戦の日々が大一番の自信へとつながった。

 フリーで2度転倒したソチは悔しさまじり。再び首に下げた金メダルを「いろいろな物を犠牲にして得たご褒美。結果を誇りに思ってメダルの味をかみしめたい」と見入った。勝利への飽くなき追求心が、王者を至極の境地へと導いた。 (江陵・原田遼)

◆現役続行を表明

 羽生結弦が17日、優勝後の記者会見で、現役続行の意思を表明した。3連覇へ意気込みを問われ「今は特に次の(2022年北京)五輪については考えていない。そんなに甘くないのは知っている」とした上で「もうちょっと滑ると思う。みんなと一緒に滑りながら、またいろいろ考えていけたら」と話した。

 2連覇が懸かる世界選手権(3月21〜24日・ミラノ)出場は「まだ分からない。やはり(昨年11月に負った)右足(首)のけががそんなに良くはないと思っているので」と態度を保留した。

 平昌五輪後の現役続行は、昨年10月のロシア杯後に示唆していた。 (共同)

中日新聞 東京新聞

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