宇野、昇華した妙技 羽ばたく「イーグル」

2018年2月17日

男子フリーでクリムキンイーグルを決める宇野昌磨選手=17日、江陵で(田中久雄撮影)

写真

宇野選手のクリムキンイーグルの手本となった前川忠儀さん=名古屋市中区で

写真

 成長を存分に披露した。宇野昌磨選手(20)=トヨタ自動車=は、十七日のフィギュアスケート男子フリーで演技を終えると、笑顔で客席からの声援に応えた。世界のトップに迫る演技の中で、武器になったのはクリムキンイーグル。膝を深く曲げ、背中を氷の近くまで大きく反らせる独特の技は、幼いころから滑ってきた名古屋市の名古屋スポーツセンター(大須スケートリンク)で先輩のまねから始まった。

 先輩は同じ「グランプリ東海クラブ」に所属していた十一歳上の前川忠儀(ただよし)さん(31)。宇野選手が五歳でクラブに入ったころは高校生で、ジュニア強化選手で全日本選手権出場経験もある有力選手だった。ジャンプは得意ではない一方、表現力に定評があった。

 前川さんの武器が、二〇〇七年に引退したロシア代表のイリヤ・クリムキン選手の名が付いたこの技だった。練習していたとき、まだ幼かった宇野選手らが遊びでまねを始めた。「バタバタ倒れる様子が面白かった」と振り返る。

 その遊びが、観客のどよめきをもたらす大技へと昇華した。両足を一八〇度に開いて横に滑走しながら、背中が氷の面と平行になるまで体を倒す。「膝への負担が大きく、ジャンプと合わせて滑るのは筋力的に厳しい」と前川さん。宇野選手も「昔はクリムキンをやったらジャンプができなかった」と振り返る。練習を重ねるうち、今では複数の4回転を跳びながらも難なくこなすようになった。

 前川さんは現在、名古屋の繁華街でバーを営む。テレビ観戦は欠かさない。「圧倒的な技術であの技をやってくれる。めっちゃうれしい」と大舞台の後輩に声援を送る。

 「僕のトレードマークかな」とはにかむ宇野選手。自ら「いびつな形」と表現するほどの強いインパクトを観客と審査員に与え、表彰台に上がる。そんな決意は実った。

 (安福晋一郎)

中日新聞 東京新聞

※ご利用のブラウザのバージョンが古い場合、ページ等が正常に表示されない場合がございます。

Search | 検索