<村上佳菜子レポート>羽生選手の完璧な内容 涙が止まらない

2018年2月17日

男子SP競技後の記者会見で宇野昌磨(右)のイヤホンを直す羽生(潟沼義樹撮影)

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 驚くほどレベルの高い戦いでした。ソチ五輪の時には、SPで100点を超える選手が4人も出るとは、想像もしていませんでしたから。

 羽生結弦選手の演技を見て、涙が止まりませんでした。最初の音が鳴って、首を軽く回した瞬間に、羽生選手の世界に引き込まれました。演じると言うより、フィギュアを奏でているという表現がぴったりくるような演技に、気付いたら、椅子から立ち上がって拍手をしていました。それほど完璧な内容でした。

 大けがをして、絶対に不安な気持ちはあったはずです。私の場合、現役時代はほぼ休みなしでした。1日休むだけで、感覚が変わって不安になってしまうからです。だから2カ月休んだら、私なら戻すのに半年かかったかもしれない。羽生選手はウエートトレーニングやリハビリなど、できることを探し、映像を見てイメージトレーニングもしたりして、無駄な時間を過ごさなかったはずです。だからこそ、この演技につながったと感じました。

 羽生選手は金メダルを取った前回大会の経験があります。一方、宇野昌磨選手は初めての五輪にもかかわらず、あれだけ堂々と演技ができるのは、宇野選手のもともとの性格だと思います。食べるのも面倒と言うほど、フィギュア以外に興味がないんです。だからこそ、強い気持ちで、プレッシャーにも緊張にも負けずに落ち着いて演技ができたと思います。

 団体戦でミスがあった4回転フリップもしっかり決めました。なかなか見られないガッツポーズも見ることができました。小さなころから知っているので、成長した姿をこの大舞台で見られて、感慨深いものがありました。SPでは難しいステップに少し詰まった感じが見られました。宇野選手の持ち味である難しいステップを滑らかにこなせる部分を出しつつ、ジャンプを決めてほしいです。

 メダル争いは100点を超えている4人が中心になるでしょう。でも4回転を跳ぶ選手が多く、90点台後半の選手も可能性がないとは言えません。もちろん、表彰台に2人で乗ってほしいですし、ワン・ツーフィニッシュが見たい。きょうの内容なら、金メダルをふたつ下さいって思ってしまいます。 (プロフィギュアスケーター、ソチ五輪代表)

中スポ 東京中日スポーツ

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