
羽生圧巻、王者の舞 「僕は五輪を知っている」
2018年2月17日
男子SPで首位発進した羽生結弦=田中久雄撮影 |
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30人による男子のショートプログラムが行われ、66年ぶりの2連覇を目指す昨季の世界選手権王者の羽生結弦(ANA)が111・68点で首位発進し、世界選手権2位で初出場の宇野昌磨(トヨタ自動車)が104・17点で3位につけた。羽生はサルコーとトーループ、宇野はフリップとトーループの4回転ジャンプを決めた。
世界選手権2度優勝のハビエル・フェルナンデス(スペイン)が107・58点で2位、世界選手権で2年連続3位の金博洋(中国)が自己ベストの103・32点で4位。グランプリ(GP)ファイナル王者のネーサン・チェン(米国)は82・27点で17位と出遅れ、初出場の田中刑事(倉敷芸術科学大大学院)は80・05点で20位だった。前回の2014年ソチ冬季五輪銅メダルのデニス・テン(カザフスタン)は70・12点で27位に終わり、上位24人で争われる17日のフリーに進めなかった。 (共同)
冒頭のジャンプに懸けていた。静かなピアノの音色に合わせて滑りだして20秒後。羽生が跳んだ4回転サルコーは寸分の乱れもなく軸が定まり、しなやかに降り立った。
GOE(出来栄え点)は2・71点。9人の審判のうち6人が満点「3」の評価をするほどの美しさ。「大きなことを言うなと言われるかもしれないが、僕は五輪を知っている」
ソチ五輪王者になる前から身に付けていた大技。地鳴りのような歓声に乗り、残るジャンプも成功させた。
「自分の体が覚えている。サルコーも、トーループも、アクセルも何年間も一緒に付き合ってくれたジャンプ。感謝をしながら跳んでいた」。自らが持つ世界歴代最高に1・04点差まで迫る演技につなげた。
4回転サルコーには「不安があった」。SPでは難易度の高い4回転ループを回避。韓国入り後から一貫して4回転サルコーでプログラムを仕上げてきた。だが練習にはジャンプの本数制限があり、精度を十分に上げることができないまま本番を迎えた。
この日朝、SP曲をかけた予行練習では3回転になるミス。曲終了後の残りの練習時間は4回転サルコーに費やした。
演技前の6分間練習でも、一度ずつ他のジャンプを確認すると、その後3度、4回転サルコーを試した。「体が動いていない部分とか、脳みそが動いていない部分とか、ちょっと、刺激してあげるような感じでやっていた」。出番は6分間練習直後の1番手。疲れを残してしまう危険を顧みず、跳び続けた。
ぎりぎりでかみ合った歯車。王者は金メダルをつかみながらフリーの失敗を悔やんだソチ五輪を思い出す。「フリーのミスが、ここまで4年間頑張って強くなった一つの原因。あすリベンジしたい」。4年分の情熱を注ぎ込み、完璧な演技につなげる。 (原田遼)

