銀の小平、0秒26差「実力足りず」

2018年2月15日

女子1000メートル 銀メダルに輝いた小平奈緒=田中久雄撮影

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 女子1000メートルが行われ、世界記録保持者の小平奈緒(相沢病院)が1分13秒82で銀メダルを獲得した。1500メートル2位の高木美帆(日体大助手)は1分13秒98で銅メダル。郷亜里砂(イヨテツク)は1分15秒84で13位だった。ヨリン・テルモルス(オランダ)が1分13秒56の五輪新記録で初優勝した。

 高木美は1500メートルの銀に続くメダル。スピードスケートの日本選手による同一大会複数メダル獲得は、1998年長野五輪の男子500メートルで金、1000メートルで銅を手にした清水宏保以来、2人目となった。スピードスケートの個人種目で複数の日本勢が表彰台に立つのは、2010年バンクーバー五輪の男子500メートルで長島圭一郎が2位、加藤条治が3位となって以来で3度目。

 (共同)

 スケートの奥深さを改めて知った。今季ワールドカップ(W杯)で4戦3勝しても、世界記録を樹立しても金メダルに届かない。0秒26差で銀メダルに終わった小平は「ただ実力が足りなかった。どの競技を見ても五輪は強い人が勝つ。私は1000メートルに関しては自分が強いと信じ切れなかった」と潔かった。

 スプリンターとしての本領を発揮できなかった。最初の200メートル通過は全体3位の17秒67。今季のW杯では低地のノルウェーでも17秒57で入っている。

 レース前からの不安が的中した。抽選の結果、スタートが経験値の少ないアウトコースに決まった。今季4度のW杯はすべてインコースだった。

 「1000メートルはインとアウトで全く違う種目になる」と結城コーチ。アウトコースは最初のカーブまでの直前が短い。小平は「コーナーに入るまで加速できないので、そのあたりが下手」と素直に認めた。

 遅れを取り戻そうと、200〜600メートルの一周は全選手最速の26秒88で駆け抜けたが、力を使って加速した分、最終周は29秒台まで大きく落とした。「最後まであきらめずにゴールラインの先まで実力を出し切れた」と語り、悔しさは押し殺した。

 2010年バンクーバー五輪は、団体追い抜きで銀メダル。「個人でのメダルはうれしい」と胸を張る。でも「誰よりも速く滑る」ことを追い求めてきただけに、満足はしていない。

 18日の500メートルは2シーズン無敵で絶対の自信がある。「1000メートルで3位以内なら500メートルで金が方程式」。言い続けてきた数式に狂いはない。

 (江陵・原田遼)

 <小平奈緒>(こだいら・なお、相沢病院=スピードスケート女子1000メートル)同種目の世界記録、500メートルの日本記録保持者。10年バンクーバー冬季五輪の団体追い抜き銀メダル。今大会は1500メートルで6位。得意の500メートルは昨季から国内外で無敗。今季、W杯通算優勝回数を日本女子最多の19まで伸ばした。長野・伊那西高、信州大出。17年、中日体育賞受賞。165センチ、60キロ。31歳。長野県出身。

◆小平、最初の200メートルに悔い

 銀と銅。2人の日本人選手が表彰台に上がった。手放しで喜ぶべき快挙だと思う。ただ、世界記録保持者の小平にとっては銀メダルでは満足できないかもしれない。

 勝負は最初の200メートルの入りにあった。中、長距離が得意な高木美の場合、中盤以降にラップが落ちないことは自明。トップ選手との差を詰めるとすれば、200メートル通過をどれだけ速く入れるかにあった。スプリンター型の小平はどうしても中盤からのタイムの落ち幅が大きい。だから200メートルでどれだけ差をつけるかが鍵だった。

 高木美の17秒66という入りは、思い切った最高の滑りだった。それが銅メダルにつながった。一方の小平は17秒67。恐らく本人も納得できていないはず。今季の小平は走るのではなく、いきなり氷をとらえて滑りだすようなスタートに進化した。その一番の武器を生かせないレースとなった。スタート前に震えが見えた。硬さもあったのだろう。

 絶対女王の小平には得意の500メートルが残っている。今回の600メートル通過タイムは全選手でトップ。トップスピードはしっかり出ているという証しだ。500メートルはさらにスタートが重要となる。周囲の期待やさまざまな声に左右されず、いい緊張感と集中力を持ってスタートラインに立ってほしい。きっと結果はついてくる。

中日新聞 東京新聞

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