<クローズアップ平昌>小平の新型ブレード 5ミリの差、絶対の違い

2018年2月14日

小平奈緒が現在使用しているブレード「サファイア」(下)は、以前使用していたブレード(上)より先端が5ミリ長い

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 100分の1秒を争うスピードスケートは、用具の選択も選手のパフォーマンスを大きく左右する。日本女子短距離のエース、小平奈緒(相沢病院)は平昌五輪を迎えるまで得意の500メートルで24戦無敗。金メダル筆頭候補とされる強さを語る時、昨季後半に新調したスケート靴のブレード(刃)は欠かせない。

 「自分の思いに応えてくれる」。小平が相性の良さを口にするのが、2016年末に登場したバイキング社(オランダ)の青いブレード「サファイア」だ。

 国内の用具専門業者によると、サファイアは研磨した後に刃先に残る「バリ」と呼ばれる極小の突起が、従来のブレードよりもできやすい。指先で触れて引っかかりを感じる程度だが、氷をつかみやすくなる。陸上短距離選手がはくスパイクに似た効果があり、業者は「スタート時にパワーを生み、カーブでの制御もしやすくなる」と説明する。

 その一方、小平の持ち味とする伸びやかな滑りも引き立てる。従来品に比べ、ブレードが靴に対して5ミリほど前方に取り付けられているため、氷とブレードの接触時間が長くなり、より大きな力を氷に伝えられるという。ミリ単位の違いだが、31歳の世界女王は「いつまでも自分の足についてくれる」と絶対の信頼を寄せる。

 シーズン途中のブレード変更は異例だったが、サファイアを使い始めた昨年1月以降、好タイムを連発。現地入り後も本番会場で臨んだ記録会で、非公認ながら五輪記録を0秒23上回る37秒05をたたき出した。中距離でも地力を発揮し、昨年12月のワールドカップ第4戦は1000メートルで1分12秒09の世界新をマークして優勝した。

 スピードスケートの用具は、かつてもブレードに絡む劇的な変化があった。1998年長野五輪で脚光を浴びたのはブレードとスケート靴のかかと部分が離れる「スラップスケート」。力を効率的に氷に伝える特性によって、タイムが飛躍的に向上した。

 一部の関係者はサファイアの登場を「革命」と評す。小平のライバルで前回ソチ五輪500メートル覇者の李相花(韓国)が今季途中から使うなど、既に多くのトップ選手に普及。ただ、「新しいブレードを使いこなすためには、選手の筋力や技術の向上が欠かせない」との指摘も。世界最速を懸けた注目のレースは18日。14日の1000メートルも目が離せない。

 (平井良信)

中日新聞 東京新聞

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