フィギュアスケート男子で６６年ぶりの五輪連覇を狙う羽生結弦（２３）＝ＡＮＡ＝が１３日、江陵アイスアリーナのメインリンクで初練習。右足首を痛めた昨年１１月以来となる４回転ジャンプを公の場で披露すると、練習後に行われた記者会見では自信に満ちた言葉を並べた。昨季の世界選手権覇者は、連覇可能な演技構成を身につけて２度目の五輪に臨む。

　勝てる武器を引っ提げて大舞台に帰ってきた。氷上練習再開からわずか１カ月ちょっと、羽生が本番リンクでの練習で披露した４回転ジャンプはサルコーとトーループの２種類。けがをする前にできていたルッツ、ループこそ披露しなかったが、６６年ぶりの偉業へ自信をみなぎらせた。

　今大会での演技構成を問われると、「作戦がすごく大事だと思っているので、たくさんの選択肢がある。もちろん、自分の中ではクリーンに滑れば絶対に勝てるという自信がある。クリーンに滑るプログラムを何にしていくかは、徐々に調子を上げていく中で決めたいと思う」。言葉を濁しながらこう答えた。

　練習後に設定された会見に訪れたメディアは、海外を含めてざっと２００人。最初に復活を待つファンに感謝の気持ちを伝えると「待っていてよかったと思える演技がしたい。夢に描いた演技をしたい」と意気込んだ。

　４回転ジャンプは２種類４本。これが現時点で予想されるフリーの演技構成だ。新技の４回転ルッツを決めた昨年１０月のロシア杯（ＧＰシリーズ第１戦）は４種類５本を投入。それに比べれば基礎点は下がるが、勝てない構成ではない。というのも、フリー歴代２位の２１９・４８点を出した２０１５年のＧＰファイナル（バルセロナ）は４回転がサルコー、トーループの２種類３本でフリー曲は同じ「ＳＥＩＭＥＩ」。２種類でも加点が付けば高得点を望める。

　この日の練習では真っ先にリンクに飛び出すと、４回転ジャンプを計５本跳んだ。フリーの曲をかけた練習では回転が抜けたり、跳ばなかったものがあるが、終始リラックスムード。男子ＳＰの１６日まで残り２日、故障の原因となった４回転ルッツの回避は確実だが、この日もトライしていた４回転ループを組み込む可能性はある。

　「つらかったことも特にない。これ以上ないことをしてきたので、何も不安要素はない」。こう言って約２０分の会見を終えると「ありがとうございました。カムサハムニダ、サンキュー、メルシー、スパシーバ」と笑顔。残る不安要素は試合勘とスタミナか。ただ、羽生結弦らしさは完全に戻っている。　（兼田康次）

　（冒頭にコメントを求められて）

　羽生「けがをしてからきつい時期を過ごしたけど、こうして無事に五輪の会場で滑れることができてうれしく思う。それとけがをして苦しい時期、日本の方々からたくさんの応援のメッセージを頂いた。本当に感謝の気持ちでいっぱい。そのメッセージの力も演技につなげたい」

　−リハビリの過程は

　「リンクに乗れるまでがすごく長かったので、その間は陸上でジャンプのフォームやイメージを固めていた。トリプルアクセル（を跳び始めたの）が３週間前、４回転は２週間から２週間半くらい前だと記憶している」

　−五輪での復帰が無理だと疑ったことは

　「戻ってこられるか、戻ってこられないかは考えていなかった。本当はＮＨＫ杯のときに痛み止めを打ってでも出ようと思っていたけど、足首が動かなくなってしまった。それから２カ月たっても難しいものがあって、『これは治るんだろうか』と考えたこともあった。でも実際にこうやって滑れているし、それがすべてだなと思う」

　−五輪会場のメインリンクで滑ってみて

　「昨年の四大陸選手権のときもそうだが、非常に感覚がいいなと。まだ調整段階で、まだやっていないジャンプやエレメンツ（演技要素）もたくさんある。自分の中の計画があるので、その計画にそって臨機応変に自分のピークをつくっていきたい」

　羽生の記者会見では、外国メディアからの質問も飛んで注目の高さをうかがわせた。

　右足首故障からの復帰戦となる。ロイター通信の記者からは「いろいろ苦労して精神的に選手として強くなった人が多い。羽生選手はどうか」と聞かれ「スケートを滑れない期間が２カ月ぐらいあった。スケートをしていたら学ぶ機会がなかったものがたくさんあった」とプラス面を挙げた。米メディア記者の「すごく細く見える。ソチの頃よりやせたか」との質問には「４年前よりも筋力がついていると思うので体重は増えていると思う」と応じた。　（共同）