<クローズアップ平昌> 世界に挑む名古屋産ブレード

2018年2月11日

国産ブレードの試作品を手に品質を説明する山一ハガネの寺西基治社長=名古屋市緑区で

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 フィギュアスケート男子は、トップ選手が複数種類の4回転ジャンプを跳ぶなど技術の進化が著しい。着氷時の衝撃が増す以上、スケート靴のブレード(刃)はより高い耐久性が不可欠。ブレード市場は英国メーカー2社がほぼ独占するが、品質に課題を残す。後発の国産メーカーが開発を進めており、日本のモノづくりが4回転ジャンプ多種類化の新時代を支えそうだ。

 開発を手がけているのは、自動車の特殊鋼部品を主力とする「山一ハガネ」(名古屋市緑区)。2010年バンクーバー五輪代表の小塚崇彦氏(16年3月に引退)から5年前に依頼を受けた。寺西基治社長は「スケート技術は進化しているのに、刃は何十年も変わっていないことに驚いた」と振り返る。

 実際、靴底に取り付ける座金とブレードをT字形に溶接して作る構造は数十年前から同じで、ジャンプが高度化した近年はブレードのつなぎ目が折れるなどの問題が頻発。小塚氏が使用してきた英国メーカーのブレードは製品ごとに品質が異なる上、毎月のように交換も必要だったという。

 山一ハガネは耐久性の高い特殊鋼を原材料に使い、約9キロの塊から275グラムを削り出してブレードを製作。溶接が不要になったことで、着氷に伴う衝撃への耐性が格段に向上した。高いジャンプが特長の無良崇人(洋菓子のヒロタ)が、ここ2シーズン使っても折れなかった。小塚氏も「以前は道具に感覚を無理やり合わせていたが、その必要がなくなった」と評価。まだ試作品の段階だが、平昌五輪後に商品化する計画だ。

 野球やゴルフに比べて競技人口が少なく、メーカーによる市場競争が働かなかったことも技術革新を阻んできた。小塚氏は「科学的な視点も他競技に比べて遅れていた」と指摘し、山一ハガネと共同開発した国産ブレードで業界に風穴をあける。

 「次回の北京五輪では、この刃を使って活躍する選手が出てきてほしい」と期待する。

 (平井良信)

中日新聞 東京新聞

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