宇野、無心フリップ 自然体で100点超

2018年2月10日

団体男子SPで演技する宇野昌磨=田中久雄撮影

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 4年に1度の大舞台で、しかも五輪デビュー戦。なのに宇野は笑いながら演技を終えた。最後のスピンの後によろめいて、思わず顔に出た。決めのポーズはしっくりはまらなかったが、素のままで五輪デビューをやり遂げ、苦戦が予想されていた日本に10点をもたらした。

 冒頭の大技4回転フリップの着氷が勝負を分けた。踏み切った瞬間「やばい」と感じ、軸が斜めになったが、空中で立て直した。体勢が乱れ、GOE(出来栄え点)の減点があったが、他選手が繰り返した転倒を回避した。

 韓国入り前、拠点の中京大ではプログラムの曲を流し、全てのジャンプをミスなくそろえるまで一日の練習をやめなかった。「気づいたら立っていた」という絶妙な空中バランスは、体に染み込むまで跳び続けた成果だった。

 演技に自信がみなぎる。「ただただ何も考えず、練習でやってきたことを信じた。それだけ」。残る4回転−3回転の2連続と、トリプルアクセル(3回転半)のジャンプはスピード、跳び幅も抜群で高いGOEを加算した。

 懸念された午前の演技も、早朝5時起床から度々うたた寝し、「ウオーミングアップも無理せず、眠たくなったら寝ようと思った」と気にしなかった。本番にだけスイッチを入れ、ただ一人100点台に乗せた。

 前回ソチではあこがれの羽生結弦(ANA)が団体SP1位から個人戦に臨み、金メダルをつかんでいる。それだけに、個人戦のライバルとなるチェンらに圧勝した価値は高い。

 「団体戦と個人戦は別物。つながるものはない」と気を引き締める。風変わりなスタイルだが、自分の納得する道を歩んできた。気づかなくても、頂点はすぐそこまで近づいている。

 (原田遼)

中日新聞 東京新聞

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