宇野「冬」をしっとり熱演

2018年2月9日

団体男子SPで演技する宇野昌磨=田中久雄撮影

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 ため息の続いたスタンドに最後にさわやかな風を吹かせた。有力選手が転倒を繰り返す中で、最終滑走の宇野は難易度の高いジャンプで降り立ち、ビバルディ「冬」の世界をしっとりと熱演。五輪デビューの20歳は「特に特別な感情はなかった。全日本選手権の方が緊張した」とさらりと言ってのけた。

 「自分も失敗するんだろうな」と割り切って臨んだ。演技を待つ間、体を動かしながら横目で他の選手の演技を見た。いつもと変わらぬルーティンだが、個人戦の優勝候補ネーサン・チェンらが4回転で転倒。「五輪は特別な舞台なんだ」と頭によぎった。

 少し肩の力が抜けた。冒頭の4回転フリップは回転軸が大きくゆがみ、傾いたままに着氷しながらも右足に力を入れ、左足で必死にバランスを取った。「気づいたら立っていた」。GOE(出来栄え点)の減点がありながらも最低限の9・44点を獲得。残る二つのジャンプは加点を得る鮮やかさでそろえ、他の選手を引き離した。

 最後の決めのポーズで転びそうになり、笑って初演技を終えた。圧勝で10ポイントを日本にもたらし、「チームを考えず、自分に集中してほしい」と仲間にエールを送った。

 関係者によると、過密日程を考慮して当初は団体戦回避も視野に入れていた。エース羽生結弦(ANA)のけがで、図らずも出番が回ってきた。調整が難しくなった分、個人戦より先に五輪の雰囲気を経験できるメリットもある。

 「どんな心境になると、どんな演技になるか試しながら滑った」という団体戦。熱演したプログラム同様、「冬」の主役になろうとしている。

 (江陵・原田遼)

中日新聞 東京新聞

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