<クローズアップ平昌> 「王国」愛知、女子代表ゼロ

2018年2月9日
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 フィギュアスケート日本勢の顔触れは、平昌五輪代表男女シングル5人のうち、長く「フィギュア王国」に君臨してきた愛知県の出身者が男子の宇野昌磨(トヨタ自動車)だけで、女子は5大会ぶりにゼロとなった。競技の人気拡大により全国に有望選手の育成拠点が拡大。国内の勢力図に変化が見られる。

 愛知県は、五輪メダリストの伊藤みどりや浅田真央を輩出。2010年バンクーバー、14年ソチ両五輪は3人の女子代表全員が愛知出身だった。だが浅田、安藤美姫、鈴木明子、村上佳菜子が相次いで引退すると、世代交代と相まって関西勢が躍進した。

 平昌の女子代表は京都市出身の宮原知子(関大)と神戸市出身の坂本花織(シスメックス)の二人。愛知県スケート連盟の久野千嘉子フィギュア強化委員長は「他県に拠点となるリンクができ、環境面で愛知と遜色なくなった」と指摘する。

 1985年に全国268カ所にあった屋内スケート場は15年に86カ所まで減少。それでも愛知県は通年営業の民間3施設があり、強化で他県を引き離してきた。だが、浅田がシニアデビューした06年を機に全国的にフィギュアの競技人口が急増した。18歳未満の日本スケート連盟フィギュア登録者数は、前年の1769人から2133人に増え、その後も右肩上がり。昨年は3699人に達した。

 これに呼応するように、数こそ多くないものの選手育成の場として大学や自治体が支援するリンクが大阪など各地に誕生。平日でも夏場でも練習できる環境が整備された。

 そのさきがけでもある中京大の競技者専用リンクは07年の完成。ナショナルトレーニングセンターに指定され、系列校の選手だけでなく、日本スケート連盟の強化選手も受け入れてきた。かつては宮原や坂本も地元のリンクが一般営業で使えない週末になると、泊まりがけで中京大を訪れ、トップ選手が日常的に力を高め合う愛知ならではの環境に刺激を受けて育った。

 愛知県出身者の五輪代表は減ったが、浅田ら多くの名選手を育てた山田満知子コーチは「中京大では愛知の選手も他県のトップ選手も互いに研究して、日本全体が強くなればいい」と話している。

 (原田遼)

中日新聞 東京新聞

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