新田、進化続け「銀」 6大会連続出場のレジェンド

2018年3月15日

男子スプリント・クラシカル立位決勝 ゴールに向かって力走する新田佳浩(左)。銀メダルを獲得した。右は優勝したカザフスタンのアレクサンドル・コリャディン=平昌で(共同)

写真

◆日本、メダル7個に

 平昌冬季パラリンピック第6日の14日、アルペンスキーは2回の合計タイムで争う大回転を実施し、女子座位で村岡桃佳(早大)が今大会の日本選手団初となる金メダルを獲得した。自身4個目で、日本勢の冬季大会1大会最多に並んだ。最終日の18日は回転に出場予定で、全5種目での表彰台を目指す。

 ノルディックスキー距離の男子スプリント・クラシカル立位では、2010年バンクーバー大会王者の新田佳浩(日立ソリューションズ)が銀メダルを手にした。距離勢は今大会初の表彰台。日本のメダル数は7個となり、大会前に掲げた14年ソチ大会の6個を上回る目標を達成した。

 アルペンスキー男子大回転座位は鈴木猛史(KYB)が4位、狩野亮(マルハン)が5位。滑降2位の森井大輝(トヨタ自動車)は1回目に転倒して途中棄権した。ノルディックスキー距離の男子スプリント・クラシカル立位で17歳の川除大輝(日立ソリューションズJSC)は準決勝で敗退し、9位だった。

 パラアイスホッケーの日本は5〜8位決定予備戦でノルウェーに1−6で敗れ、16日の7、8位決定戦でスウェーデンと戦うことが決まった。 (共同)

     ◇

 6大会連続出場のベテラン新田佳浩が、再び大舞台で輝きを取り戻した。わずか0秒8差で目標の「金」は逃したが、2010年のバンクーバー大会以来、8年ぶりのメダル獲得となる「銀」で存在感を示した。

 勝負を分けたのは、残り数百メートルの直線。左のひじから先がない新田は、右手のストックを使わず、懸命にスキー板だけを動かした。だが、両手にストックを持って加速するカザフスタンの選手に追い抜かれた。ゴール直後は倒れ込み、悔し涙を流した。「銀を取れてホッとしたが、やっぱり金じゃないと。なんで取れなかったのか」

 バンクーバー大会で2個の金メダルを獲得。だが前回のソチ大会ではゼロ。その1カ月後、妻の知紗子さんから「そろそろ競技をやめてほしい」と告げられた。子育てや家事、仕事をしながら、アスリートの夫を支えることに疲れていた。

 しかし、新田は「絶対続ける」と断った。「もう一度、金メダルを」。トップを極めたプライドが、引退を許さなかった。

 平昌までの4年間は「今の力をどれだけ伸ばすか」に主眼を置いた。五輪選手も利用する国立科学スポーツセンターで、医科学的な見地を踏まえたトレーニングを導入。滑走時のバランスが改善し「今までで一番良くなった」と話す。週3日、約3時間の筋力トレーニングも続け、常に進化を求めた。

 8年ぶりのメダル獲得には、二人の息子の声援も励みになった。レース中、7歳の大翔(だいと)君と4歳の健翔(けんと)君が「お父さん」と呼ぶ声が耳に入ったという新田。「頑張った姿を見せられた」。ゴール後、2人を抱きかかえた「レジェンド」は、優しい父親の表情になった。17日の10キロクラシカルは得意種目。次こそ頂点を奪い、家族と喜びを分かちあう。 (平昌・田井勇輝)

<新田 佳浩(にった・よしひろ、日立ソリューションズ=ノルディックスキー距離男子スプリント・クラシカル立位)> 98年長野大会から6大会連続出場。10年バンクーバー大会で距離2冠を達成。177センチ、68キロ。37歳。岡山県出身。 (共同)

中日新聞 東京新聞

※ご利用のブラウザのバージョンが古い場合、ページ等が正常に表示されない場合がございます。

Search | 検索