脱北者選手、感謝の大舞台 どん底から代表に

2018年3月13日

11日、チェコ戦に出場した崔光赫選手=江陵ホッケーセンターで(上野実輝彦撮影)

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 平昌(ピョンチャン)冬季パラリンピックの韓国選手団で唯一の脱北者、パラアイスホッケーの崔光赫(チェグァンヒョク)選手(31)が初の大舞台で奮闘している。幼いころに北朝鮮で片足を失い苦労を重ねたが、多くの人の助けを借りて韓国代表まで上り詰めた。13日は予選最終戦の対米国戦。自分を受け入れ育ててくれた恩師や代表チームに感謝を込め、韓国初のメダル獲得を目指す。 (江陵(カンヌン)・上野実輝彦)

 11日のチェコ戦で念願の初出場を果たした崔選手。第2ピリオド最後の2分間余り、右サイドから果敢にアシストを狙ったが、惜しくも得点には結び付かなかった。試合後は「最初で最後の出場というつもりで全力で走りきった」と語った。

 北朝鮮北部で生まれ、7歳のころ両親が離婚し、引き取ってくれた祖母も2年後に他界した。駅でアイスクリームを売って生計を立てていたが、無賃乗車で列車の屋根を移動していた13歳の時、誤って転落し左足を車輪に挟まれ失った。

 以後、物乞いをしながら暮らしたが、自身の食料調達にも困る北朝鮮の人々が障害者を思いやる余裕はなかった。2001年8月、先に脱北していた父親の助けで韓国に渡り、義足をつけるようになったものの、言葉や習慣の違いになじめず、たばこやゲームにおぼれる日々が続いた。

 転機は11年の韓国福祉大入学。アイスホッケー選手だった教員の紹介で、パラアイスホッケーを経験した。「脱北者と障害者という二重の困難を克服したい」と決意し、クラブや実業団で実力を伸ばし、世界ランク3位の韓国代表の座を射止めた。

 今大会には北朝鮮選手も参加している。「私は彼らに会いたいが彼らはそうではないだろう。反逆者と見られるかもしれない」と複雑な気持ちもある。一方で初出場後、学生時代の恩師が「太極旗を胸につけて戦うまでになったな」とたたえてくれた。予選最終戦では出場機会が限られる可能性が高いが、応援してくれる知人や観客の思いを胸に「チームに良い影響が出るよう力を尽くしたい」と誓う。

中日新聞 東京新聞

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