
成田、攻め抜いて「銅」 スノボ日本勢で初
2018年3月13日
スノーボードクロス男子下肢障害で銅メダルを獲得し笑顔の成田緑夢(共同) |
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平昌冬季パラリンピック第4日の12日、独立した競技として新たに加わったスノーボードはスノーボードクロスを実施し、男子下肢障害で成田緑夢(ぐりむ=近畿医療専門学校)が銅メダルを獲得した。日本選手がスノーボードでメダルを取るのは初めて。日本はアルペンスキーの3個に続き、今大会4個目のメダルを手にした。
初出場の成田は予選を1位で通過。決勝トーナメントの1回戦、準々決勝を勝ち上がったものの、準決勝は転倒し、2014年ソチ大会銅メダルのキース・ガベル(米国)に敗れた。3位決定戦では前回金のエバン・ストロング(米国)を破った。
大腿(だいたい)障害の小栗大地(三進化学工業)は準々決勝で敗退して7位。パラ陸上走り幅跳びの第一人者、山本篤(新日本住設)は1回戦で敗れ、12位だった。
ノルディックスキー距離はフリー走法で争う長距離レースを行い、立位の女子15キロで4大会連続出場の出来島桃子(新発田市役所)は7位。男子20キロで17歳の川除(かわよけ)大輝(日立ソリューションズJSC)は9位だった。 (共同)
◆転倒恐れず前回覇者破る
挑む姿勢を忘れなかった。パラリンピックのスノーボードで日本勢初のメダルに輝いた成田。期待された「金」と色は違うが、一度は諦めた「特別な舞台」で結果を出し、「今までもらった中で一番重いメダル」と屈託なく笑った。
予選は安定した滑りで1位通過。準決勝も先行し、アウトサイドを滑って逃げ切ろうとしたが、気温上昇と進行の遅れが重なって想像以上に荒れたバーンに板を取られた。迎えた3位決定戦。「今大会の目標は挑戦。今までなら、こけたら守りに入っていたけど、攻めた」。準決勝で転倒したカーブでもひるまず、前回覇者に大差をつけてゴールした。
熱血指導で知られる父のもと、2006年のトリノ五輪に出場した兄成田童夢、姉今井メロとともに幼いころからスノーボードに乗った。五輪を目指すのが当たり前の家庭環境だった。
高校時代にトランポリンでも活躍し、13年3月にはフリースタイルスキーで世界ジュニア王者となるなど高い運動能力を示した。五輪に手が届きかけたその翌月、自宅のトランポリンで練習中に着地に失敗。左足の靱帯(じんたい)が切れ、ひざから下の感覚をほぼ失った。
「競技スポーツはもうやめよう」。楽しむためにと出場したウエークボードの大会で、健常者を抑えて優勝。すると会員制交流サイト(SNS)で「けがをしても頑張る姿に勇気をもらった」とメッセージが届いた。自分だからできることがあると気づいた。
授与式ではメダルを首にかけられ、満面の笑みで観客に大きく手を振った。「今はこのメダルに喜びたい。重みが最高にうれしい」。次のバンクドスラロームで頂点にとの周囲の期待をよそに、気負わず挑み続ける。 (神谷円香)

