「スポーツで南北団結を」 卓球元韓国代表・洪さん

2018年3月10日

1991年の世界卓球選手権で優勝した洪次玉さん(左から2人目)やリ・ブンヒさん(同3人目)らの南北合同チーム。胸には朝鮮半島マークがついている=洪さん提供

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 元韓国代表の卓球選手でソウル大講師の洪次玉(ホンチャオク)さん(47)は、9日に開幕した平昌(ピョンチャン)冬季パラリンピックに参加する北朝鮮選手団を感慨深く見守っている。かつて世界大会で史上初の南北合同チームを結成し、団体戦優勝を勝ち取ったメンバーの1人。「スポーツで南北が一つになれれば」と願う。 (平昌・上野実輝彦)

 9日の開会式を自宅テレビで見た洪さん。冬季パラリンピック初出場の北朝鮮に「合同入場できればもっと良かったけど」と思いつつも、過去の自分たちと重ね「歴史的な瞬間はいつもスポーツを通じて生まれる」と感じている。

 千葉で1991年に開かれた世界卓球選手権。2カ月前の南北会談で、北朝鮮選手2人と、洪さんを含む韓国人2人による合同チーム結成が急きょ決まった。国際大会で戦ったことはあるが、北朝鮮選手と組むのは初めて。政治利用された形で、「私にはどうにもできない」と自分を納得させるしかなかった。

龍仁市で、南北合同卓球チームの思い出を語る洪次玉さん=上野実輝彦撮影

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 代表を落選した仲間もいるし、使う卓球用語も南北で違う。ぎこちなく始まったチームの雰囲気を和らげたのは、同年代の同性が交わす何げない会話だった。「この化粧品がいいよ」「髪形はどうやって整えるの」「彼氏はいる?」…。買い物や食事を重ねて相手を少しずつ知るようになり、大会決勝では団体戦で18年ぶりに中国を破り快挙を達成した。合同チームを「小さな統一」だったと振り返る洪さん。解散後、再び敵として対戦した時は「なぜ同じ民族で戦うのか」と感じるまでになっていた。

 平昌パラリンピックでは、元チームメートとの再会が期待された。北朝鮮の障害者体育協会書記長を務めているとされるリ・ブンヒさんは、韓国入りの可能性が取り沙汰されていた。

 物静かで冷静な試合運びが持ち味のリさんを「オンニ(お姉さん)」と呼んでいた洪さん。結局、訪韓は実現しなかったが「お互い母親になった。今後もし会えたら、子どもの話をしたい」と語る。

 北朝鮮のパラリンピック参加に「政治的演出」の側面があるのは承知している。それでも「スポーツを通じれば南北はきっと団結できる」。思い出を胸に、スポーツの力を信じる。

中日新聞 東京新聞

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