<クローズアップ平昌>温暖化で冬季五輪の開催危機

2018年2月24日

 地球温暖化の影響は冬季五輪にも着実に押し寄せている。カナダのウォータールー大専門家チームは先月、温室効果ガスの排出量が劇的に削減されない限り、今世紀末には平昌を含む過去20の冬季五輪開催地のうち13都市で、再び大会を行うことが困難になるとの研究結果を発表した。今冬も雪不足で欧州の各競技大会が中止となるケースが続出。冬季五輪に未来はあるか。 (多園尚樹)

 研究結果をまとめた同チームのリポートによると、1920〜50年代の冬季五輪は大会期間中の開催地の平均気温が0・4度だったが、60〜90年代は3・1度に上昇した。今世紀中には7・8度まで達すると予測している。

 平昌五輪は極寒の氷点下で行った開会式以降、雪不足による影響はなく日程を消化してきたが、同チームを率いるダニエル・スコット教授は「伝統的に冬のスポーツが盛んだった地域の気候は、これまで通りとはいかない。冬季五輪を開催できる地域はどんどん限られていく」と指摘する。

 日本は過去に札幌と長野で冬季五輪開催の経験があるものの、2080年代に冬季五輪を再開催できる寒さが見込めるとした7都市のうち、日本は札幌だけが残った。

 気候変動の国際ルール「パリ協定」が順守されれば、新たに長野やトリノなど4都市での再開催が可能としたが、温室効果ガスの排出量が多い米国のトランプ政権が協定からの離脱を表明しており、先行きは不透明となっている。

 温暖化問題に詳しい名大宇宙地球環境研究所の檜山哲哉教授によると、北極振動やラニーニャ現象の影響で、今月の福井市のように限られた期間に局所的に大雪や極寒に見舞われるケースもある。ただ、地球規模で気温は上がり、降雪も減少傾向。「今後は冬季五輪を安全に開催しようと思えば、より北に位置する都市で開催するほうが理にかなっている」と話す。

 温暖化による雪不足は冬季競技の大会に毎年のように影響を及ぼしており、今年は既に渡部暁斗(北野建設)らが出場を予定したノルディックスキーの複合やジャンプ女子のワールドカップで中止が相次いでいる。

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中日新聞 東京新聞

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