妻と並走、夢は続く 渡部暁、悲願の「金」持ち越し

2018年2月21日

ノルディックスキー複合個人ラージヒル 後半距離のゴール後に肩を落とす渡部暁斗選手=20日、平昌で(潟沼義樹撮影)

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渡部由梨恵選手

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 【平昌=上條憲也】20日のノルディックスキー複合の個人ラージヒル(LH)で渡部暁斗選手(29)は、ゴールすると、雪上に倒れ込んで天を仰いだ。後半距離の最終4周目まで先頭を引っ張りながら、他の選手の板が接触する不運もあって脱落し5位に終わった。「頂上は見えているけど、なかなか上り方が分からない」。4度目の五輪は悔しさがにじんだ。

 フリースタイルスキー・ハーフパイプ(HP)の妻の由梨恵選手(29)と初めて夫婦そろっての五輪。海外遠征などで一年の大半を別々に過ごしながらそれぞれの道で平昌を目指し、支え合ってきた。

 早大スキー部時代からの付き合いで、暁斗選手が銀メダルを獲得した前回ソチ五輪後に結婚。平昌を目指す暁斗選手とともに、由梨恵選手も同じ舞台を目指した。結婚を機に辞めると思っていたという由梨恵選手の母山崎和子さん(60)は、暁斗選手に「いいの?」と聞いた。答えは「いいんじゃないですか」だった。

 結婚後も、遠征費を蓄えるためアルバイト生活だった由梨恵選手に金銭的な支援を申し出たのは暁斗選手。「最初は遠慮があった」という由梨恵選手の背中を「やるなら一生懸命やってほしい。やり切ってほしい」と押した。由梨恵選手は「思い切りわがままをさせてもらった」と感謝する。

 一方、暁斗選手は、由梨恵選手から、目標にひたむきに進む姿勢を学んだ。だから、自分を超えようと大きな目標を公言しながら勝負に挑む。その姿を由梨恵選手は「たまに変なことも言っているけど、きっと意味があるんだろうなと思って見ている」と優しく見守る。

 由梨恵選手は十九日の試合で出場二十四人中二十二位と振るわなかった。その結果を聞いた暁斗選手は「この四年間、五輪を目標にやってきたので結果が残って良かったんじゃないか」とたたえた。暁斗選手もメダルは逃したが「後半距離の90%くらいは僕が先頭にいた。まあ、頑張ったかな」。夫婦での初の五輪。大切なものをつかんだ。

 二十二日の団体に向け、「反省点を修正してメダルが取れるように良い仕事をしたい」。悔しさを今大会最後の種目にぶつける。

中日新聞 東京新聞

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