渡部暁斗、限界5位 「金メダルは遠かった」

2018年2月21日

個人ラージヒル後半距離を5位でゴールし倒れ込む渡部暁斗=平昌で(潟沼義樹撮影)

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 平昌のアルペンシア・距離センターで行われた個人ラージヒルで、渡部暁斗(29)=北野建設=は5位に終わった。前半飛躍(ヒルサイズ=HS142メートル)を134メートルの首位で折り返したが、後半距離(10キロ)で逆転を許し、2位だった個人ノーマルヒルに続くメダルを逃した。表彰台はドイツ勢が占めた。前半5位のヨハネス・ルゼックが初優勝し、ファビアン・リースレが2位、個人ノーマルヒルを制したエリック・フレンツェルが3位となった。ノルディック複合の表彰台独占は1936年五輪のノルウェー以来で82年ぶり。

 渡部の、日本スキー界の悲願はスキー大国に打ち砕かれた。5番目でフィニッシュラインを通過した瞬間、崩れるように倒れ込んだ。すべての力を使い果たしての完敗。またしてもノルディック複合の個人種目の金メダルはお預けになった。

 「展開としては最悪。僕の思ったようにいかなかった。何て言えばいいんですかね。悔しいけど、悔いはないみたいな。よく分かんない感じです」

 3本の矢にやられた。前半のジャンプで首位に立ったが、問題は距離が強いドイツ勢が4、5、6位だったことにある。ノーマルヒルで逆転優勝を許したフレンツェルを含めた黒いウエアの3人は交代で先頭に立って追いかけてきた。最初にあった24秒差は2・5キロで16秒差、5キロで9秒差まで縮まり、6キロすぎに追いつかれた。渡部は最後の力を振り絞って、8キロすぎでスパート。またも追いつかれ、前の選手と接触するとバランスを崩して後退。最後の上り坂でも追いつけず、メダル圏内から脱落した。

 分かっていても攻め続けた。「逃げ切れる可能性は低いけど、いけるところまで行こうと思った」。序盤はわずか1秒差でスタートしたリーベル(ノルウェー)との2人旅もほとんど自身が引っ張った。「ちょっと(力を)使いすぎたかなというのが失敗その1。失敗その2は仕方がないけどリーバーがああいう走りしかしなくて」。交代で引っ張ろうとしない相方と連携プレーで追いかける3人。運も悪かった。

 「バランスを崩さなかったとしても、4位と5位が代わったくらい。あそこで限界がきていた。なかなか頂上は見えているけど、登り方が分からないというか…。こういう展開でも勝てるようにならないと本物のチャンピオンにはなれない。まだまだだなと思う」

 『キング・オブ・スキー』の道は遠く、ソチ五輪に続いて銀のみ。ダーツにヨガ、座禅など、あらゆることにヒントをつかもうと探求した4年間だったが…。残る種目は22日の団体戦。せめてスキー大国に意地を見せたい。 (兼田康次)

◆暁斗 一問一答

 −バランスを崩したのは踏まれたのか

 渡部「踏まれてはいない。単純にゴチャゴチャしていて接触していたくらい。あそこで限界がきていた」

 −仕掛けたところは

 「一番(コースの)奥からいこうと思った。悔いは残したくなかった。(コーチの)河野(孝典)さんと金メダルを取るんだったらいつもと違うところというか、他の人が予想外のことをしないとチャンスはないだろうと話をしていた。誰も行かなさそうなところで行き始めて。そこら辺は悔いがないところ」

 −個人種目を終えて

 「ソチのときはベストを出し切った。ラージヒル6位で悔しかったけど、出し切ってスッキリしている部分もあって。きょうはスッキリ感はなくて。これからどうしようかなというところもある。金メダルは遠かった」

 −違う仕掛けもあったのか

 「仕掛けたところはよかったと思うけど、それが最後まで持つような走力が必要。今年はジャンプに力を入れた分、そういう結果になった。欲を言えばもっと離せるジャンプも必要。まだまだということ。3、40秒離して、あそこで仕掛けて持つような走力があれば、金メダルや勝利が近づいてくるかなと」

 −団体戦に向けて

 「いいレースを見せることはできなかったけど、いいジャンプはしていた。きょうの反省を生かして、また団体戦でもいいジャンプをして、いい走りがしたい」

中スポ 東京中日スポーツ

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