<クローズアップ平昌>欧米TV局の都合で深夜や午前に競技

2018年2月16日

空席が目立つノルディックスキー・ジャンプの会場=10日、平昌で(共同)

写真

 平昌五輪の変則的な競技時間が、選手らの負担になっている。ノルディックスキーのジャンプやスピードスケートは夜の遅い時間に行われ、フィギュアスケートは午前に始まる。巨額放映権料を支払う欧米のテレビ局の事情が日程の決定に絡んでおり、2年後の東京五輪でも主役たちが難しい対応を迫られる可能性がある。 (佐藤航)

 東京五輪・パラリンピック組織委員会の室伏広治スポーツ局長は、今夏をめどに固める方針の東京五輪のスケジュールについて「アスリートファースト(選手第一)の視点を忘れず、時間設定も配慮しなければならない」と話す。

 だが平昌五輪では、ジャンプ女子が午後9時50分、同男子は午後9時半以降の開始。現地からの情報によると、スキー人気が根強い欧州でテレビ観戦しやすい時間帯に合わせたとされる。10日の男子ノーマルヒル決勝はしかも、予想以上の強風で中断が相次いだ。気温も下がり続け、競技終了の11日午前0時半には氷点下10度を下回った。

 7位入賞の小林陵侑(土屋ホーム)は「足先の感覚があまりなかった」。極寒に耐えかねて決着を見届けず帰路につく観客もいた。日本と時差のない大会だが、子供がリアルタイムでテレビ観戦するにも厳しい状況だった。

 一方、フィギュアの試合は午前10時台から。2008年北京五輪では競泳の決勝が午前に実施された例があるが、フィギュアの午前スタートは異例だ。韓国の午前はフィギュア人気が高い北米の夜に当たる。放映権を持つ米NBCテレビにとって、競技時間は自国のゴールデンタイム。宇野昌磨(トヨタ自動車)は9日午前10時開始の団体男子ショートプログラムに向け、毎朝5時に起きて本番に対処したが、ライバルのネーサン・チェン(米国)はジャンプで転倒するなど精彩を欠いた。

 NBCは14年ソチ五輪から夏季を含めた10大会の米国向け五輪放映権を計120億3000万ドル(約1兆2900億円)で取得。放映権料は国際オリンピック委員会(IOC)の大きな収入源となっている。競技時間の設定について、元NHKディレクターの杉山茂氏は「桁違いに金を出している米国の放送局の影響は大きい」と指摘。東京五輪についても「米国に強い選手が多い競泳は、向こうの都合にあった競技時間を主張している」とみている。

 大会は20年7月24日開幕。酷暑に配慮した時間設定は当然だが、欧米のテレビ放送が幅を利かすようだと、選手のパフォーマンスを低下させかねない。観戦客の移動も通勤ラッシュに重なる恐れがある。

中日新聞 東京新聞

※ご利用のブラウザのバージョンが古い場合、ページ等が正常に表示されない場合がございます。

Search | 検索