「金」の極意は楽しむココロ 五輪Q&A

2018年2月15日

 過去の五輪では金メダル獲得が本命視された選手が敗れるなど、日本人アスリートには大舞台で本領を発揮できない印象がこびりつく。たびたび指摘されてきたのは、本番のプレッシャーに押しつぶされる精神的弱さ。米ミシガン州立大でスポーツ心理学を学んだ大体大体育学部の小菅萌講師に選手の内面について聞いた。 (多園尚樹)

 Q 日本人選手は本当に精神的に弱いのか。

 A 特別弱いとは思わない。ただ、欧米に比べると全般的にメンタル面のトレーニングや準備、その必要性についての認識も十分ではない。例えば、米国ではトップ選手個々でメンタルトレーニングに積極的に取り組む。多くのスポーツ心理学の専門家が関わり、学問の認知度も比較的高い。体のコンディショニングと同じで、普段から心理面もシステマチックに準備し、本番に挑むことが必要だ。

 Q 理想の精神状態とは。

 A 最大のパフォーマンスを発揮できる最適な心理状態は選手ごとに違う。不安はありすぎてもなさすぎても、良いパフォーマンスは望みにくい。不安が大きすぎると視野が狭くなり、不安がなさすぎると注意力が散漫になる。

 Q 「試合を楽しみたい」という選手の声をよく聞く。

 A 競技を楽しめる状態は、超集中状態を指す「ゾーン」に入るための一つの条件でもある。良い傾向だと思う。

 Q 平昌五輪に限らず、日本スポーツ界は結果を伴わなかった選手が試合後に頭を下げる場面が目立つ。

 A スポーツ心理学の理論では「誰かの期待に応えたい」というのは選手の動機づけになり得るが、競技を続けるにはそれだけでは難しい。他人ではなく自分のために集中する部分がなければ、何らかの壁に直面しやすくなる。

 Q 五輪に熱中しやすい日本人の国民性が、選手にプレッシャーを与えているとも考えられる。

 A 結果ばかりを気にして評価するような周りの対応は選手を追い詰めることもある。ただ、程度の差はあれ、五輪で大騒ぎするのは日本だけではない。選手には周囲の過度な期待や反応にうまく対処するスキルが求められる。

中日新聞 東京新聞

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