渡部暁、次こそ頂 2大会連続銀

2018年2月15日

個人ノーマルヒル 後半距離で力走する渡部暁斗(右)とエリック・フレンツェル=潟沼義樹撮影

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 後半距離の4周目、最後の上り坂だった。先頭集団を引っ張っていたフレンツェルが、ラストスパートをかけた。渡部暁も加速して追いすがったが、続く下り坂で大きく離された。五輪に照準を合わせてきた前回ソチ大会王者にまたもやられた。4・8秒差の2位でゴールした。それでも渡部暁は「最後の上りまではプラン通り。引っ張るところも引っ張った」。納得の試合展開を満足そうに振り返った。

 4度目の大舞台。平昌の気まぐれな風を受けた前半の飛躍で「やっぱり五輪というのは運がいる」と感じた。試行錯誤を重ねてきた踏み切りのタイミングをうまく合わせた。後半距離をトップと28秒差の3位でスタートした。

 前回ソチ大会では、後半距離に強いフレンツェルと話し、「協力して逃げよう」と抜け出して一騎打ちを演じた。そのフレンツェルは今回、前半飛躍で5位。距離の前には「今回はひと言も交わしてない」というが、周回を重ねるごとにフレンツェルが前へ。渡部暁も時に先頭に立ち、4人の集団とはいえ事実上の一騎打ちの展開となった。

 風の抵抗を受ける先頭を走るのはどの選手も嫌がる。だが、渡部暁が理想とするのは、どんなに風の抵抗を受けても後続を先導し勝つこと。だからこそ「自分の求めている理想の姿。彼が勝ってくれて良かったな」。金メダルを逃したことも忘れて、代わる代わる先頭に立った同い年のライバルをたたえた。

 2大会続けての銀メダル。悔しさがないと言えばうそになる。W杯では1〜2月に4連勝を飾り総合首位に立っている。本場欧州勢に強さを示すためにも、五輪での栄冠が必要になる。次の出番は20日に行われる個人ラージヒル(LH)。「僕が自信をつけるとしたら、金メダルをとらないと。そうでないと次に進めない」。そう語ると、顔が引き締まった。

 (平昌・上條憲也)

 <渡部暁斗>(わたべ・あきと、北野建設=ノルディックスキー複合個人ノーマルヒル)98年長野五輪のジャンプを会場で観戦して小学4年でジャンプを始め、中学1年から複合に取り組んだ。06年トリノから五輪4大会連続出場。14年ソチ五輪で個人ノーマルヒル銀メダル。世界選手権は09年に団体で金、17年に個人ラージヒルで銀、弟の善斗と組んだ団体スプリントで銅。長野・白馬高、早大出。173センチ、60キロ。29歳。長野県出身。

(共同)

◆距離 ゆとり持っていた

 渡部暁のジャンプは悪くなかった。他の有力選手が風で落とされて嫌な流れかなと思ったが、渡部暁が飛ぶときは条件も味方していた。

 ジャンプの結果を受けて、距離ではフレンツェルとの最後の勝負になると予想された。どのように試合を運ぶか。経験豊富な渡部暁も考えたことだろう。先頭の集団で滑りながら、後続に追いつかれないようにしつつ、駆け引きをしていた。

 渡部暁もある程度ゆとりを持っているように見えたし、最後の上りでも離されないようにしていた。前回のソチ五輪以降、ラストスパートを課題にしてトレーニングをしてきてもいた。

 だが、フレンツェルも距離は得意。距離では負けないという自信もあっただろう。今季はジャンプが良くなかったが、今回は距離で逆転できる位置につけた。途中は疲れた様子も見せながら、最後には力を出し切るレース運びが素晴らしかった。

 平昌の会場は雪の状態や風などの気象条件が厳しい。この1試合を戦って感覚はつかめたと思う。渡部暁はラージヒルも得意なので、今回以上に期待が持てる。団体も楽しみだ。永井ら他の日本選手もいいジャンプをしていたので、メダル争いに加われるだろう。

中日新聞 東京新聞

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