<クローズアップ平昌>変わる選手支援の形

2018年2月13日

メンバー23人中14人が「アスナビ」を利用して就職したアイスホッケー女子=12日、江陵でのスイス戦(共同)

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 2020年東京五輪に向けた選手支援が活発化する一方、冬季競技のアスリートを取り巻く環境は厳しい。夏季競技に比べ、海外遠征費や用具代などの負担が重いためだ。苦境を脱しようと、NPO法人を設立して費用を集めたり、企業が丸抱えしていたチーム選手の雇用を分散させたりと支援の形が変わってきた。

 カーリング男子で20年ぶりの五輪出場のSC軽井沢クは1年の3分の1を海外遠征で過ごす。活動費は年間2000万〜3000万円。日本オリンピック委員会(JOC)の強化費が約3分の2、残りをNPO法人「スポーツコミュニティー軽井沢クラブ」が地元企業から集めた。

 成績が低迷して費用が減った時は、選手が貯金を切り崩して遠征費を捻出。成田空港までワゴン車で移動して新幹線代を浮かせたこともあったが、15年に大手時計メーカーのシチズンが加わり、現在のスポンサーは20社を超えた。NPO職員として働く両角友、山口はジュニア世代の指導もするなどして地域に貢献。長岡理事長は「NPOによる地域密着を評価してもらえた」と話す。

 女子のLS北見も特定の団体や企業に依存せず、幅広くスポンサーを集めて初の五輪出場につなげた。

 企業がチームを所有し、一社で指導者や選手を雇用する従来の形も変化しつつある。実業団スポーツの存続は会社の業績や景気に左右されるが、選手が個別に仕事を持って自活できれば、企業への依存は減り、競技活動が行き詰まるリスクも低下する。

 そんな新たな支援策を先導しているのが、JOCが選手の就職を仲介する「アスナビ」だ。これを利用して就職した日本代表選手(内定を含む)は14年ソチ五輪で10人だったが、平昌五輪では21人と倍増。アイスホッケー女子はメンバー23人中14人と突出する。

 学習塾経営の市進ホールディングス(千葉県市川市)は15年6月に岩原知美をアスナビを通じて採用。毎月の給料のほか、1本6万円のスティックなど年間100万円かかる用具代を支援する。以前は郵便局のアルバイトなどで生計を立てていた岩原は「安心して競技に打ち込めるようになった」と感謝する。

 ただ、昨年4月以降のアスナビでの採用は夏季競技が58に対し、冬季競技は8。冬季競技は練習拠点が雪やアイスリンクのある地域に限定される難点があり、企業から声がかかっても、勤務先が遠いなどの理由で選手が断るケースもあるという。(平井良信)

中日新聞 東京新聞

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