沙羅、念願の「銅」 ソチから4年…成長を証明!

2018年2月13日

銅メダルを獲得し、ガッツポーズで喜ぶ高梨(共同)

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 女子ノーマルヒル(ヒルサイズ=HS109メートル)が平昌のアルペンシア・ジャンプセンターで行われ、高梨沙羅(21)=クラレ=が、念願の銅メダルを手にした。ジャンプ勢は2014年ソチ五輪の男子ラージヒルで葛西紀明(45)=土屋ホーム=が2位、団体が3位になっており、2大会連続の表彰台。女子では初のメダルで、通算12個目となった。マーレン・ルンビ(ノルウェー)が初優勝した。伊藤有希(23)=土屋ホーム=は9位。岩渕香里(24)=北野建設=は12位、勢藤優花(20)=北海道ハイテクAC=は17位だった。

◆焦らず、慌てず、諦めず

 涙に暮れたソチ五輪から4年。悲願の頂点には届かなかった。それでも沙羅が平昌の空に架けた放物線は、大きな成長を示すものだった。失意を経て「自立」し、大人の表情を浮かべるヒロインが、記念すべき日本女子ジャンプ初のメダルを獲得した。

 「ソチの悔しさをはね返したい」。この4年間は、常に「自分」と向き合う時間だった。ソチ五輪までは、決められた練習メニューを「完全に納得しないまま淡々とやり続けていた」という。苦い思いを味わい、選手としての経験が深まるにつれ、敷かれたレールの上を走るだけだった姿勢が徐々に変化した。「自分に何が足りないのか、ずっと考えていた。ここぞという時に力を出せる選手になりたい」。アスリート、そして1人の人間としての沙羅の自我が芽生えていった。

 20歳から取り組み始めたメークも、自らを変えるためだった。競技出発の2時間前、身支度を調えて鏡に向かう。「オフからオンに切り替えるためのスイッチ」。最初のシーズンは、強い自分を演出するための力強く目元を描いたが、今季は少しナチュラルに変えた。女性としておしゃれを楽しみながら、アスリートとして戦う姿をメークで表現しようとしていた。

 それでもなかなか欲しい結果には、手が届かなかった。W杯ではどれだけ勝利を積み重ねても、大一番の世界選手権は勝てない。今季からは日頃の練習の中で気付いたことをメモに取り始めた。アプローチや踏み切り感覚という技術面や自らの日々の心の動きも。メモに箇条書きし、重要なものは清書。そしてスマートフォンに画像を保存し、いつでも見られるようにし、ずっと自分と向き合った。

 今季はここまでW杯未勝利と不振にあえいだ。それでも、しっかりと自分を知った沙羅は落ち着いていた。「焦らず、慌てず、諦めず」−。そう心に言い聞かせながら、徐々に調子を取り戻し、しっかりとこの大一番に合わせてきた。

 何度も夢に出てきたというソチ五輪から4年。弱かった過去の自分と決別し、成長を示した21歳に、メダルの輝きはやっぱりよく似合う。 (大上謙吾)

 ▼高梨沙羅(たかなし・さら) 1996(平成8)年10月8日生まれ、北海道出身の21歳。152センチ、44キロ。グレースマウンテン・インターナショナル出、日体大4年、クラレ所属。2014年ソチ五輪4位。W杯個人総合優勝4度。世界選手権個人は13年の銀メダルが最高。

◆高梨沙羅の歩み

▽1996年   

 10月8日生まれ。北海道上川町で育ち、小学2年でジャンプ競技を始める

▽09年3月3日    

 国際大会のコンチネンタルカップに初出場で19位

▽10年3月2日    

 コンチネンタルカップ(蔵王)で大会初入賞3位

▽11年2月19日    

 コンチネンタルカップで初優勝、FIS公認女子最年少記録

▽11年2月25日    

 世界選手権に初出場、6位入賞

 ▼11〜12年シーズン

▽12年1月8日    

 W杯第3戦2位で初表彰台

▽12年3月3日    

 第11戦(蔵王)でW杯初優勝。日本人女子としても初。シーズン個人総合3位

 ▼12〜13年シーズン

▽13年2月17日    

 2戦残して初の個人総合優勝、シーズン8勝

▽13年2月23日    

 世界選手権で日本人初の銀。混合団体で金

 ▼13〜14年シーズン

▽14年1月3日    

 女子最多W杯13勝に並ぶ

▽14年1月11日    

 女子単独最多W杯通算14勝目

▽14年1月18日    

 葛西紀明の日本人最多に並ぶW杯通算16勝目

▽14年1月19日    

 日本人歴代最多W杯通算17勝

▽14年2月2日    

 W杯女子シーズン最多10勝目

▽14年2月11日    

 ソチ五輪1回目100メートルで3位も、2回目失速で98・5メートルの4位

▽14年3月22日    

 W杯シーズン15勝。2季連続個人総合優勝

▽14年5月12日    

 日体大に飛び級進学へ

 ▼14〜15年シーズン

▽15年1月18日    

 W杯第4戦で2年ぶりに表彰台を逃す

▽15年3月13日    

 W杯最終戦通算30勝目。シーズン総合2位

 ▼15〜16年シーズン

▽16年2月6日    

 初の9連勝でW杯通算40勝

▽16年2月7日    

 W杯10連勝に更新

▽16年2月19日    

 シーズン12勝目、3度目総合優勝を決める

▽16年2月28日    

 17戦14勝、通算44勝

 ▼16〜17年シーズン

▽17年1月8日    

 第6戦でW杯通算49勝。50勝に王手

▽17年1月29日    

 6戦ぶり優勝、W杯通算50勝目

▽17年2月5日    

 歴代最多記録「53」に王手

▽17年2月16日    

 平昌五輪テスト大会第18戦で勝利、歴代最多タイ53勝

 ▼17〜18年シーズン

▽2018年     

 ルンビ、アルトハウスの2強の前にW杯10戦未勝利。歴代最多記録54勝を達成できず平昌五輪へ

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