<アンニョン> 平昌アラリ

2018年2月12日

 平昌冬季五輪の開会式で歌われた民謡のアリラン。朝鮮半島の各地で歌詞や曲調を替えて伝わり、この五輪では南北融和の象徴となっている。

 平昌にもその一つ「平昌アラリ」がある。政治的なものとは趣を異にする生活に根差した素朴な歌だ。地元の老人会館にいた金南日(キムナミル)さん(84)が歌ってくれた。日本の民謡に似たゆっくりとしたメロディー。山から取ってきた草を食べようとするが、その草を見るだけであなたを思い出す−。そんな内容の歌詞だそうだ。

 日本の植民地時代、山あいのこの地域に食べる物は少なかった。家族と共に二歳から住み始めた金さんは、山で食べられる草を取りながらこの歌を口ずさんでいたという。暮らしぶりは決して楽ではなかった。

 五輪が開幕して町は大にぎわい。道路は渋滞し、飲食店には人が入りきらないほどだ。老人会館にも五輪の競技が見られるよう、地元自治体から「サムスン」の液晶テレビが無償提供された。静かだった町の変化に、五輪招致の影響力を感じずにいられない。歌の中にだけ、昔の素朴な平昌の姿が残っているのかもしれない。

 (安福晋一郎)

中日新聞 東京新聞

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