旗手・葛西「神化」の時 恩人の言葉を胸に

2018年2月10日

日本選手団の旗手を務めた葛西紀明=潟沼義樹撮影

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 両手で握りしめた団旗を左右に大きく振り、誇らしげに胸を張った。日本選手団の旗手を務めた葛西。前日にノルディックスキー・ジャンプノーマルヒル男子の予選で、冬季史上最多となる8度目の五輪出場を果たしたばかり。疲れも見せず、日本チームの「顔」として祭典の幕開けを彩った。

 「カミカゼ」「レジェンド(伝説)」。ジャンプの本場・欧州でそう呼ばれてきた。ワールドカップ(W杯)通算500試合出場を達成した2年前には、「永遠に若い日本の奇跡のワシ」と報じられたこともある。

 強い肉体と精神を武器に、世界の空を飛び続けてきた葛西選手を表す言葉に、昨年、新たなものが加わった。

 「神化(しんか)」

 葛西が所属する北海道の建設会社のスキー部総監督だった川本謙さん(68)が昨年10月に退任した際、贈った言葉だ。これまでの神がかった偉業とさらなる飛躍を期し、「進化」の言葉にかけている。

 2000年代初め、企業スポーツが相次いで休部に追い込まれる「冬の時代」があった。葛西も当時、所属していたチームを失った。そんなとき、スキー部を新設して社内に迎え入れたのが川本さん。以来、葛西は全面協力してくれる社の方針に感謝しながら競技に励み、社員は一丸となって応援してきた。最近は企業スポーツのあるべき姿を模索する会社が、ノウハウを聞こうと川本さんを訪ねて来ることもある。

 葛西は「神化」という言葉に「メダルがとれたときはそれを大きく紙面に載せてください」。旗手としての誇りと川本さんがくれた言葉を胸に10日、ノーマルヒルの本戦に挑む。 (平昌・上條憲也)

中日新聞 東京新聞

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