<アリランの風>(4)市場 庶民の台所は生まれ変わる

2018年2月6日

笑顔で客にお釣りを渡す野菜売りのお年寄り。何でもそろう江陵中央市場は大勢の人たちが行き交う=江陵で

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 野菜に干物、洋服…。さまざまな店が並び、売り物は通路の真ん中にまでせり出す。スケート競技場から車で15分ほど。江陵(カンヌン)中央市場は建物内に300軒、周囲も含めれば計500軒もの店がひしめき合う。朝鮮時代から続く庶民の活気あふれる台所だ。

 五輪開幕を前に、看板を替えたり壁を塗装したり。昨年12月にソウルと江陵を結ぶ高速鉄道(KTX)が開通し、訪れる人が増えた。年々、売り上げが落ちていた市場は、KTX開通で観光型の市場へ生まれ変わろうとしている。市場商人会長の金甫南(キムボナム)さん(43)は「清潔にして親切に応対すれば人は来る」と五輪後を見すえる。

 地下1階で水産物を売る李明子(イミョンジャ)さん(75)は、約40年前に建物ができた頃から夫と2人で働き、4人の子を育て上げた。息子の1人が事業に失敗して預金はほとんどゼロになり、夫は5年前に亡くなった。早朝から夜まで働くから、地元での五輪は家に帰ってからテレビで見るつもりだ。

 「市場の人はみんないい人ばかり。五輪でたくさんの人が来て、たくさん買ってくれたら」。五輪が仲間たちに幸せをもたらすと信じている。

  写真・田中久雄/文・境田未緒

中日新聞 東京新聞

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