幼児も練習可、施設充実 スノボ10代躍進

2018年2月12日

愛知クエストの施設でスノーボードを楽しむ若者。コースの着地面には衝撃を和らげるエアマットが敷かれ、気軽にジャンプ体験ができる=愛知県春日井市内津町で

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 平昌五輪のスノーボード男女日本代表は、16歳の国武大晃(STANCER)ら10代選手が半数の8人を占める。いずれも幼少期から遊び感覚でエア(空中技)に熱中。雪がなくても技の習熟に打ち込める日本特有の施設が若手台頭の背景だ。

 まだ3、4歳か。愛知県春日井市のスキー・スノボ施設「愛知クエスト」には、親に手を引かれた幼児も訪れる。ブラシ状の助走路を滑ってジャンプ台から飛び出すと、ゲレンデのように傾斜がついたエアマットへ。着地の衝撃は和らぎ、けがの心配は少ない。支配人の長瀬勝史氏は「子供でも楽しめる」と気軽さを強調。開業3年目だが、同様の施設は他社を含めて国内に10カ所程度あるという。

 エアマットの厚さは約1・5メートル。縦、横のサイズは最大の物でそれぞれ50メートル、15メートルと広く、日本では約15年前に登場した。海外では珍しく、外国のトップ選手が来日して夏場の練習に利用するほど。恵まれた好環境に長瀬氏は「ここから(子供たちの)才能が開くのを見たい」と期待する。

 実際、男子ビッグエア、スロープスタイルで平昌五輪に出場する国武は、愛知クエストなどでエアの感覚を養い、女子で同じ2種目に挑む16歳の岩渕麗楽(キララクエストク)も東北の系列施設に通う。

 技の高度化が進むスノボではシーズン前の夏場に新技を磨くのが通例だが、季節や地域を問わずに反復練習できる拠点が幼少期からあることで、10代でも世界に通じる日本人選手が育っている。

 エアマットに先行して同様の役割を果たしてきたのはウオータージャンプだ。三重県桑名市の「K−air」は2002年に開業。ジャンプ台からプールに飛び込む形の施設で、同じくエアが見せ場となるフリースタイルスキー・モーグル男子代表の堀島行真(中京大)は10年前からここに通う。昨年は19歳で世界選手権を制し、平昌でもメダル獲得が期待される。

 一方、雪山の施設も本格化している。岐阜県郡上市の「高鷲スノーパーク」は、五輪規格の全長150メートルを誇るハーフパイプ(HP)の専用コースを備え、18歳で前回ソチ五輪スノボ男子HPで銅メダルを獲得した平岡卓(バートン)が拠点とする。ソチ五輪を機に施設の存在も注目され、来場者数がアップ。コース監修者は「五輪を目指したいという子が増えた」と話す。

 スノボは1990年代のブームが終わって以降、競技人口が減ったが、充実の環境が若きタレントと結果を生み、競技人気や裾野拡大まで促す好循環に入りつつある。

 (佐藤航)

中日新聞 東京新聞

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