7月17日

フランス世界一 デシャン監督、至高ダブル 史上3人目、選手と監督で優勝

 ディディエ・デシャン監督(49)率いるフランスがゴールラッシュで2度目の世界一をつかんだ。2016年欧州選手権決勝での敗戦を、2年後の成功につなげた。初優勝時の主将だったデシャン監督は、ザガロ(ブラジル)、ベッケンバウアー(西ドイツ)に続いて史上3人目の選手と監督でのW杯制覇となった。次回2022年大会はカタールで開催される。

 デシャン監督がモスクワの夜空に3度宙を舞った。平均26歳のチルドレンが胴上げ。だが、これがフィナーレではなかった。試合後の会見。着替えた指揮官が第一声を発しようとした瞬間だった。「ディディエ・デシャン、ディディエ・デシャン」。教え子たちが乱入し、シャンパン、水をまき散らす“いたずら”を仕掛けた。

 「まだ、(酒の)においがするよ。少し気持ち悪いね。でも、きょうは美しい試合だった」

 1998年大会は主将としてW杯制覇。監督とのダブル優勝は史上3人目となった。人生2度目の世界一の味はシャンパンの泡にまみれ味わった。そして、ほおを赤らめ本音を少し漏らした。「正直、98年の時よりうれしい。若い選手たちと喜びを分かち合えて」。ピッチ上では厳格な指揮官だが、この時ばかりは口角を上げた。

 4発快勝劇で「美しい試合」を彩った。27歳のグリーズマンが前半18分のFKでオウンゴールを誘発、20分後にPKを沈めた。後半14分に25歳のポグバが、同20分には19歳のエムバペが加点した。ヤング・フランスが躍動し、不屈の精神で勝ち上がったクロアチアの心をへし折った。指揮官は成功の種を「心理」と語った。2年前の苦い経験から導き出した“処方箋”だった。

 準優勝に終わった2016年の欧州選手権決勝では大舞台を前に若手が「緊張した」という。今大会には心理学の専門家を同行させ、「リラックスしてプレーさせることを心掛けた」。決勝戦直前に整列したエムバペらは自然に柔らかな笑みを浮かべていた。20年ぶりの優勝はヤングパワーを引き出した手腕が一因となった。そして、表彰式後もやんちゃ坊主たちは雨でぬれたピッチに何度もダイブした。

 会見前に手荒な祝福を受けたデシャン監督は苦笑いを浮かべ言った。「彼らはまだ世界一になった本当の意味を分かっていない。これから実感するだろう。98年(大会)でもアンリ、トレゼゲが19歳だったが、2度目の優勝を経験できなかった。だが、今回の若い選手には可能性がある。シャイニング・スター(輝く星)だよ」。フランスの英雄ナポレオンさえ遠征で失敗したロシアの地で世界一を手にした。“将軍”超えを果たしたデシャン監督の下、まばゆい光を放つ黄金期の扉が開かれた。 (占部哲也)

中スポ 東京中日スポーツ

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