7月17日

異才 多彩 喝采 フランス20年ぶり王者

大雨の降りしきる中、優勝トロフィーを掲げて喜ぶジルー(中央)、エムバペ(10)ら=共同

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 【ロシアW杯本社取材団】最終日の15日、決勝が行われ、フランスがクロアチアを4−2で退け、自国開催だった1998年大会以来20年ぶり2度目の頂点に立った。初めて決勝に進んだクロアチアは98年の3位を上回る過去最高の準優勝。欧州勢が4大会連続で制した。

 フランスは1−1の前半38分、ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)で得たPKをグリーズマンが決め勝ち越した。後半は14分にポグバが3点目、20分にエムバペの4点目を挙げ、反撃を1点にしのいだ。

 大会最優秀選手「ゴールデンボール賞」にはクロアチアのモドリッチが選ばれた。6得点を挙げたイングランドのケーンが得点王となり「ゴールデンブーツ賞」を受賞。最優秀GKの「ゴールデングローブ賞」には3位になったベルギーのクルトワが選出された。最も活躍した97年以降に生まれた選手に贈られる「ヤングプレーヤー賞」は4ゴールを決めたフランスの19歳エムバペが獲得。フェアプレー賞はスペインに贈られた。

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 金色の紙吹雪が舞う中で青きフランスが優勝トロフィーを掲げた決勝は、目まぐるしく状況が変化した。W杯決勝での初のオウンゴールに始まり、議論を呼ぶPK判定、決勝ではブラジルのペレに次ぐ若さで19歳のエムバペがゴール。20年ぶり2度目の戴冠は、合わせて6点が入る乱戦を制する形でもたらされた。

 「最上の試合ではなかったが、勝利に値する戦いをした。精神面の強さを見せられた」。デシャン監督の言葉通り、23選手の平均年齢が25・6歳とは思えないしたたかさが、若いチームにはあった。

 序盤から攻勢に出たクロアチアをいなし、FKから先制。追いつかれてスタジアムが小国の番狂わせを期待する雰囲気に包まれても、慌てずにグリーズマンのPKで引き離した。後半は前掛かりになった相手の力を利用するようにカウンターから得点を重ね、堅い守りで逃げ切った。

 勝負を分けた精神力と粘り強さを引き出したのは、98年大会で主将として母国を初優勝に導いた指揮官だった。2012年の就任後、規律と一体感を重視し、和を乱せばスター選手でさえ外した。「絶対に諦めるな」と勝者の精神を繰り返し説き、準優勝に終わった2年前の欧州選手権の反省を生かして心理学の専門家も帯同させた。

 多様性を身にまとったチームでもあった。カメルーンとアルジェリア出身の両親を持つエムバペに象徴されるように、選手の6割以上はアフリカにルーツがある。グリーズマンは「出自は違っても僕たちは同じユニホームを着た共同体。これがフランスだ」と胸を張る。

 試合後、指揮官の名を叫びながら会見場に押しかけた選手にシャンパンや水をかけられ、手荒い祝福を受けたデシャン監督。「あいつらはまだ王者になった実感がないんだよ、まったく」と話す表情はどこか優しい。史上3人目となる選手と監督の両方でW杯優勝を果たしたが、本当の偉業は10年大会で内紛に揺れて惨敗した代表を再びまとめ、理想的な集団をつくり上げたことだろう。(モスクワ・浅井俊典)

中日新聞 東京新聞

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