7月8日

変幻ベルギー 進撃の知略 8人で守ってカウンター、王国撃破

 試合終了と同時に控え選手が一目散にピッチに飛び出した。優勝したかのような喜びの輪ができる。ベルギーが32年ぶりの準決勝進出。カザンの夜に響いた凱歌(がいか)は、W杯5度の優勝を誇るサッカー王国を倒すことがいかに困難だったかを物語る。

 マルティネス監督は言う。「カナリア色のユニホームを前にすれば誰だって気後れする。戦術面、精神面でブラジルを上回ることは必須だった」。3バックから4バックに変更し、ムニエを右サイドバックに下げてサイドのスペースを消し、ネイマールとマルセロのコンビを封じる策を施した。8人で守り、前線3人に攻撃の全権を託した。

 右にルカク、左にE・アザール、中央に本来はMFのデブルイネを配した変則3トップは、果敢にブラジルの強固な守備陣を振り回す。極め付きは前半31分の2点目。相手CKのクリアを拾ったルカクが自陣から重戦車のようなドリブルで切り裂き、ラストパス。受けたデブルイネが左サイドネットを射抜くミドルシュートで速攻を完成させた。

 ベルギーの黄金世代が歴史に名を刻めるかが試された一戦だった。1点を返され、なおも猛攻を受けた残り15分は「僕たちの真価が問われた」とデブルイネ。最後は、ボールをキープして相手の勢いをそぐ冷静さで乗り切った。

 マルティネス監督は「今のチームはどんな状況にも柔軟に対応できる質の高さと犠牲心がある」と誇らしそうに語る。試合を重ねるごとに一体感は高まり、指揮官の采配もさえる。優勝候補を沈めた自信を手に、「赤い悪魔」が大会の本命に名乗りを上げた。 (カザン・浅井俊典)

中日新聞 東京新聞

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