7月4日

西野J、悲劇のラスト12秒

ベルギーに敗れ、ぼう然とする西野監督(中)(岩本旭人撮影)=ロストフナドヌーで

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 わずか12秒。されど12秒−。日本のW杯史上初となる8強入りの試みはまたも志半ばで終わった。2−2で迎えたラストプレーに悲劇は待っていた。本田のCKを相手GKクルトワが難なくキャッチ。「赤い悪魔」の異名を取るベルギーが発動した電光石火のカウンターに沈んだ。さよならゴール。再開直後に笛が鳴る。西野朗監督(63)がチームにかけた“魔法”もついに解けた。

 昌子は悔しさ、自身へのふがいなさからピッチを何度も何度もこぶしでたたき、本田はピッチ上をさまよう。乾は泣き崩れた。西野監督もベンチ前でぼうぜんと立ち尽くした。2点差をひっくり返された試合後の記者会見。指揮官の第一声は「善戦することだけでなく、勝ちきらなければいけない」だった。全員で拾いにいった「転がっている勝機」は最後の12秒の衝撃的な攻撃で砕け散った。

 試合前。西野監督は選手にこう語り掛けたという。「ベルギーを本気にさせよう。本気のベルギーと戦おう」。狙いは当たる。前半は粘り強く耐え、後半3分に原口が先制、同7分に乾が加点した。だが、ベルギーが同20分に動き、「赤い悪魔」が目を覚ました。身長194センチのMFフェライニ、同187センチのシャドリを投入。制空権を奪いにきた。

 後半24、29分に今大会の課題となったセットプレー絡みから頭で2発たたき込まれた。克服困難な高さ不足という問題。西野監督は「分かっていても勝てない、そこで勝負させられるW杯がそこにはある」と左手で顔を覆った。本気のベルギーは容赦なく、同監督も「延長も考えていた。全くああいうスーパーカウンターを受けるとは予測していなかった」と嘆く、最後の一刺しを隠し持っていた。

 4月にハリルホジッチ前監督の解任劇を受け、緊急登板。前回大会の惨敗から「積み上げてきた思い」を結集し、「小さな奇跡」も起こした。結果は1勝1分け2敗。ベスト16に進んだ過去2大会よりも勝ち点は少ない一方で、最も8強に近づいたことも確か。

 「(差は)わずかであって、わずかでないのかもしれない。W杯の戦いを次につなげていけるかどうかというのが、サッカー界での意義。4年後に今大会でのチャレンジが成功と言えるようなサッカー界にしてほしい」。わずか12秒。されど12秒。「ロストフの悲劇」を生かすか殺すか。ベスト8の壁を破る教訓を後進に残し、西野ジャパンは散った。 (占部哲也)

中スポ 東京中日スポーツ

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