7月4日

乾、けが克服 1大会2発

後半、2点目のゴールを決める乾(中)(共同)

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 大会直前にレギュラーの座をつかみ、不調にあえぐチームを浮上させたラッキーボーイ的存在の乾。最後も1ゴールと気を吐いたが、ここまでの道のりには知られざるけがとの戦いがあった。

 後半7分、相手のクリアボールを香川が拾い、後ろへ落としたところを迷いなく振り抜いた。「打った瞬間、入ったと思った」。ペナルティーエリアわずかに外から放った無回転のシュートは、横っ飛びした相手GKの手から遠ざかるようにゴールの右サイドネットを揺らした。

 セネガル戦に続いて輝きを放ったベテラン。だが、その右脚はW杯直前まで痛みを抱えていた。

 「大会前にけがをして、手術を受けるように言われた。一度、W杯を諦めないといけなかった」

 右太ももの打撲で血の固まりができ、膝を曲げられない状態だった。所属チームがあるスペインで手術を勧められたが、、W杯に出たいという思いから、日本で紹介された手術を回避する治療法にすがった。「いろいろな人に頼り、急に良くなっていった」。この決断が日本の躍進につながった。

 先月12日のパラグアイとの強化試合で控え組だった乾がスタメンに名を連ねると、同じ立場だった香川との連係から2ゴール。「自分にとって大きな自信になった」。本大会でも勢いは衰えず2ゴール、1アシスト。日本人のW杯1大会での複数ゴールは稲本(02年日韓)、本田(10年南ア)に続く史上3人目の快挙だった。

 「すごくいい大会になった。けど、勝てそうで勝てない試合がこれだけ続いた。出ていないメンバーにも、ここまで来てもらったサポーターにも申し訳なくて」。30歳になったが、敗戦後はしゃがみ込み、子どものように泣きじゃくった。

 「コロンビアは強かった。セネガルの身体能力もすごかった。でも、自分たちも世界で戦えることは見せられた」。試合会場からの去り際に思いの丈をさらけ出すと、涙目は澄んだ目に変わっていた。 (垣見洋樹)

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中スポ 東京中日スポーツ

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