7月4日

原口、決勝T日本初弾

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 原口が光の矢になった。50メートル以上を爆走し、ベルギーDFの背後を突いた。後半3分。柴崎のスルーパスを受けると、右足でフェイントを入れ、GKクルトワの重心を確認。右足を鋭く振り抜き、逆サイドネットにボールを突き刺した。

 日本代表の決勝トーナメント初弾。まさかの一撃に一瞬の静寂の後、歓喜が爆発した。原口はベンチに向かってダイブした。「何本も走っていた中で、チャンスが来たら決めようと。正直チャンスがなくても走ろうと思っていた」。4年間磨いてきた走り。原口は渇望したW杯の舞台で歴史に名を刻んだ。

 「90分。最後の最後の時に全力疾走で誰よりも速く走って決めたい」

 2014年の冬。110メートル障害日本記録保持者の谷川聡・筑波大准教授に弟子入りを志願した。国内では生粋のドリブラーだったが変化を求めた。谷川准教授は「優先順位が群を抜いて『競技』にある」と感嘆し、二人三脚で世界と戦う走りを追及した。金、名誉、名声に目もくれない。純粋に「うまくなりたい」。それが原口が持つ最大の長所だという。

 今大会、自身の願望は胸の奥に封印した。得意の左ではなく、右で起用された。だが、不平不満を口にすることは一度もなかった。「自分の好きなところで勝負したいという気持ちは常にあったけど、すべてを出し切れた」。だが、火はくすぶっている。

 4年後に向けてこう言った。「力の差はまだある。でも、楽しかったかな。本当にもう1回チャレンジしたい」。自身が目指したベスト4には手が届かなかったが、大きな足跡は残した。27歳。まだ次がある。今度は「誰よりも速く走る」中心軸としてW杯の舞台に戻ってくる。(占部哲也)

中スポ 東京中日スポーツ

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