7月4日

一瞬夢を見た 想定外2点リード…狂った試合運び

 【ロシアW杯本社取材団】第19日の3日は、決勝トーナメント1回戦で、F組1位のスウェーデンがE組2位のスイスに1−0で勝ち、3位になった1994年米国大会以来のベスト8進出を決めた。

 第18日の2日は、2大会ぶりに駒を進めたH組2位の日本が2−3でG組1位のベルギーに逆転負けし、初の8強入りを逃した。日本が決勝トーナメントに進むのは2002年日韓大会、10年南アフリカ大会に続き3度目となったが、また16強止まりだった。

 ベルギーはブラジルと6日(日本時間7日)の準々決勝で対戦する。

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 乾が、酒井宏が、あふれる涙を隠そうともしない。うずくまった昌子は拳を何度もピッチにたたきつけた。初の8強は確かに手の届くところにあっただけに、残酷な幕切れを受け入れられなかった。

 2−2の後半ロスタイム、延長戦突入が迫ったラストプレーだった。日本のCKをGKクルトワがキャッチしてから、わずか12秒。電光石火のカウンターで、痛恨の決勝ゴールを許した。ピッチ脇に立ち尽くした西野監督は「2点のアドバンテージがありながら負けた非は私のベンチワークにある」と責任を背負い込んだ。

 前半を無失点で終えた日本は後半の立ち上がり、リスクを冒して敵陣へ攻め入った。3分、相手の背後に飛び出した原口が、柴崎のスルーパスを受けて先制ゴールを決めた。4分後には乾が香川とのコンビネーションから強烈なミドルシュートをたたき込む。持ち味の組織力と機動力を生かした攻撃は、今大会の躍進を象徴するようだった。

 しかし、前評判を覆す日本優位のスコアが、試合運びを狂わせる。「こういう形になるプランは組み立てていなかった」と指揮官。3度目の決勝トーナメントで日本が得点するのも、リードを奪うのも初。未知の領域でチームを待っていたのは、西野監督が「本気のベルギー」と評した強豪の波状攻撃だった。

 高さが弱みの日本に対し、ベルギーは後半20分に身長194センチのフェライニと187センチのシャドリを投入。空中戦を仕掛けられると、24分から5分間で2得点を奪われ、追い付かれた。さらにはE・アザールらの緩急をつけたドリブルとパス、サイドチェンジで揺さぶられた。

 吉田は「リードしてから少し受け身になり、ミスが増えた。もう少しうまくマネジメントできたと思うが、精神的なもろさが出た」と漏らした。全方位から攻撃を受けた日本は、複数の選手が脚をけいれんさせるほど疲弊。西野監督は選手交代で状況の打開を試みたが、地力の差は埋めがたく、最後に超高速カウンターでとどめを刺された。

 長友は「一瞬、ベスト8の夢を見た。でもベルギーの方が明らかに強く、化け物だと思った。これが世界との差」。善戦こそしたが、最後は必然の敗戦だった。 (浅井俊典)

中日新聞 東京新聞

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