6月29日

「勝利の喜び 決勝Tで」 他力選択 消極試合に複雑 現地サポーター

ポーランド戦の後半、時間稼ぎでパスを回す長谷部誠選手(右端)ら日本イレブンを見るサポーター=28日、ボルゴグラードで(共同)

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 次は強豪ベルギー戦だ−。日本が二大会ぶりの決勝トーナメント進出を決めたサッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会。ただ二十八日のポーランド戦では、勝ち点が同じセネガルとの警告数を意識し、日本がパス回しで時間稼ぎをする戦術を取り、現地で応援したサポーターからはブーイングも。国内でも「次は全力でぶつかって」「点を取りにいって」とエールが送られた。

 【ロシア南部ボルゴグラード=栗田晃、河北彬光】「素直に万歳できなかった。采配を支持するしかないけれど…」。スタンドで声援を送った浜松市中区のギョーザ店経営、千賀幹彦さん(64)は、思い描いていた歓喜の瞬間の当てが外れ、試合後に苦笑いした。

 地球の反対側まで出掛け、現地で観戦した前回のブラジル大会。日本はゼロ勝一分け二敗で惨敗し、千賀さんも選手と同じ悔しさを味わった。それだけに、今大会の初戦でコロンビアに勝った時は男泣き。店は一カ月休業していて次戦も観戦する予定といい、「初のベスト8進出を決めてくれたら、もう泣くどころじゃない。感動は次まで取っておきます」と話した。

 多くの日本サポーターは終盤の時間稼ぎを「大人の選択」として受け入れた様子だ。しかし、那覇市の高校一年、金城黎(れい)さん(15)は「楽しみにしていたW杯に来て、日本が攻めないのは残念。点を取る場面が絶対に見たかった」と不満げ。勝ち点ではなく、警告数の差による一次リーグ突破でも「決勝トーナメントに進出した国が勝者だ」とたたえる父親の仁さん(52)と意見が分かれた。

 対戦したポーランドも終盤は攻め上がらず、両チームの消極姿勢にはロシア人の観戦者からブーイングや口笛が響いた。ロシア国営テレビのアナウンサーは「これでは、サッカーの神様に罰せられる」と厳しく実況。この状況に、新婚旅行で観戦した東京都渋谷区の野村篤史さん(41)、真紀子さん(37)夫妻は「日本を応援してくれたロシア人も周りにいたのに、申し訳ない気持ち」と話した。

 国際的なスポーツ大会では、プレーの内容よりも結果が優先されるケースもある。W杯の現地観戦は六大会目というアイルランド人のディアムド・ヘイズさん(51)は「過去にもこんな試合はあり、珍しいことではない。日本は現実的な選択をした」と理解を示した。

 現地は試合が始まった午後五時でも三五度の猛暑。パス回しについて「実際は、選手に攻める力が残っていなかったのでは」とみるサポーターもいた。

中日新聞 東京新聞

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