6月29日

西野J薄氷の決勝Tに賛否 16強へ賭け 終盤攻めず

ポーランドに敗れたものの、決勝トーナメント進出を決めた日本イレブン=28日、ボルゴグラードで(岩本旭人撮影)

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 サッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会で日本は、二十八日の一次リーグH組最終戦でポーランドに敗れたものの、勝ち点、得失点差などで並んだセネガルを順位決定の規定で上回り、二大会ぶりの決勝トーナメント進出を決めた。初のベスト8を懸けて、七月二日午後九時(日本時間三日午前三時)の一回戦でベルギーと対戦する。

 残り15分、日本の選手は突如として攻めることをやめた。得点は0−1。最終ラインでボールをつなぎ、中盤の守備的な選手に当ててはまた戻す。鳴りやまないブーイング、試合途中でぞろぞろと帰り始める観客たち。騒然とした雰囲気の中、二大会ぶりの決勝トーナメント進出は決定した。

 西野監督が言う。「選手は私のメッセージを忠実に遂行しただけ。自分としても不本意だが、一次リーグ突破のための究極の選択だった」。直前にH組のもう一試合でコロンビアがリードを奪っていた。このまま0−1の状態を維持すれば負けても突破が決まる。他会場の「他力に頼る」(監督)危険な賭けだった。

 これほど監督のベンチワークが問われた試合もない。主力組の疲労を考慮し、酷暑の中でも走り負けぬよう先発六人を大胆に入れ替えた。フレッシュなメンバーで攻め勝つもくろみも、好機で決められずに後半14分にFKから失点。ベンチに近い左サイドの長友らに2失点目のリスクを冒さない方針転換を伝えた。

 決定的な意思表示は後半37分の主将長谷部の投入だ。フェアプレーポイントでセネガルをわずかに上回る状況を伝えたうえで、「不要なファウルは避けろ。ある程度は安全に。このままの状態で良いと伝えてくれ」と矢継ぎ早に指示。長谷部は「状況が変わったらすぐに教えてください」と言い残しピッチに向かった。

 明確な意図を持って、負けたまま試合を終わらせる。大舞台でこんな状況に直面するのは日本サッカー史でも初めてだろう。「自分のプランになかった」と吐露する西野監督は、銃撃のない戦争と呼ばれる真剣勝負の場で、無理に攻め入るより、目標の十六強のために生き残る道を選んだ。

 次の相手はベルギーに決まった。危うい賭けを乗り切った監督は「今日の分まで強気に試合を迎えたい」と話す。決勝トーナメントは一発勝負。ここから先は、勝利以外に生き抜くすべはない。(浅井俊典)

◆「踏ん張った」「失望した」

 決勝トーナメント進出を決めた日本代表だがポーランド戦の終盤で消極的な試合運びを展開し、議論となっている。

 ノンフィクション作家の木村元彦さんは「まだ10分近く時間があるのに、日本は自陣に引きこもり、ポーランドもボールを奪いに来ない。談合のようで失望した」と痛烈に非難した。「セネガルが点を入れたらおしまい。1点取れば突破なのに、自分たちで未来を切り開くチャレンジをやめてしまった」と分析した。

 一方、作家のあさのあつこさんは「前評判が高くない中、踏ん張って決勝トーナメント進出をもぎ取ったことは、素直に喜んで良いと思う。ベルギー戦は、選手自身も納得できるようなプレーをしてほしい」と話した。

中日新聞 東京新聞

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