6月28日

本田圭佑という男、星稜高 野球部・山下名誉監督が語る

セネガル戦で引き分け、サポーターの声援に応える本田圭佑=24日、エカテリンブルクで(共同)

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 高校野球の名門、星稜の山下智茂名誉監督(73)が27日までに、同校出身のサッカー日本代表MF本田圭佑(32)=パチューカ=との思い出を語った。W杯1次リーグ最終戦のポーランド戦で、2大会ぶり3度目の決勝トーナメント進出を狙う日本代表の中心選手。所属する部は野球とサッカーで違い、監督と選手の関係ではなかったが、社会科教諭と生徒として関係も深かった、かつての教え子は、元巨人、大リーグ・ヤンキースの松井秀喜さん(44)の背中を必死に追っていた。

 最初は私の社会科の授業中だったか、職員室に尋ねてきた時かもしれません。本田が私に聞きました。

 「どうすれば松井秀喜さんのようになれますか」

 あんなふうになりたい、松井のようにビッグになりたいと言うのです。

 私は「人間性が大事だぞ」と、高校時代の松井に言ったのと同じ話をしました。「考え方をしっかり持て。松井も本をたくさん読んでいたぞ」。ことあるごとにそんな話をし、うちの家に来たこともありました。

松井秀喜さんの写真の前で笑顔を見せる山下智茂名誉監督=金沢市の金沢星稜大で(佐藤航撮影)

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 G大阪で上(ジュニアユースからユース)に上がれず、悔しい思いをしてうちの高校に来た子です。強い思いがあったのでしょう。「ビッグになりたい」と、言うことは大きかったけど、その努力には誰もが納得していました。

 私はいつも早朝6時ごろにはグラウンドに出て整備をしていたのですが、本田が朝の練習に来るのも同じような時間でした。今は言葉通りの活躍に驚いています。

 以前、卒業生が私に面白い話を言ってきたことがありました。本田が腕時計を二つしているのは有名ですが、あれは「本田が山下先生のをパクってますよ」と皆で話しているというのです。

 2000年に巨人が優勝した時、私は長嶋(現終身名誉監督)さんと松井からV記念の腕時計をもらいました。生徒たちにせがまれてそれを授業に持って行き、両腕につけて見せました。「一流」とは何かを教えたかったのです。当時の生徒たちはそれを覚えていて「まねした」と。そんなはずないと思わず笑ってしまいましたが、本田はあの授業を覚えているでしょうか。

 彼が欧州に行ったばかりのころに、学校に帰ってきた姿を見てカミナリを落としたことがあります。「なんだ、その茶髪は!! それにジーパンなんて。松井は毎年ネクタイを締めて来ていたぞ」。その時、本田は「先生、すみません。でも欧州で日本人がなめられないためには、格好も大切なんです」と言っていました。サッカーは相手と体もぶつかるし、野球とはちょっと違うのか、あいつも戦ってるんだなと思いました。

 それでも、教え子にはきちんとした格好で帰って来てもらいたい。だから私も引きません。「分かった。でも、学校に来る時には髪は黒くしろ。俺は人間的にはおまえが好きだ。でも、おまえの服装は嫌いなんだ」。そう言ってはみましたが、あいつは笑っていましたね。

中スポ 東京中日スポーツ

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