6月25日

乾 光った右足一振り 対セネガル 2度追い付く

 押し込まれる時間が長い嫌な流れを変えたのは、乾だった。前半、同点に追いつくゴールを決めて自身の大会初得点を記録。「楽しみでしかない」と語っていた30歳が、初参加のW杯で躍動した。

 0−1の前半34分、ピッチ中央から柴崎が放り込んだロングパスを左サイドで長友が収めると、自身も連動。入れ替わるようにペナルティーエリア内で受け、狙いを定めて右足を振り抜いた。ややカーブを描いたボールがゴール右隅に吸い込まれると、跳び上がって右拳を突き上げた。事前合宿で何度も練習した攻撃を、最高の形で結実させた。

 1点を勝ち越された後の後半33分には、大迫のクロスを左サイドで受けて中に折り返し、本田が押し込んだ同点弾をアシスト。後半42分に退いたが、日本の全2得点に絡む活躍だった。

 ひとたびボールを持てばそのドリブルで相手に脅威を与えてきた。緩急を使い分け、急停止するまでのスピードが速い。身長169センチの技巧派がDFを手玉に取るさまは日本の攻撃のアクセントになってきた。「(ポジション争いの)激戦区の左サイドで自分を選んでくれたことに感謝している。1次リーグ突破で(監督に)恩返しをしたい」

 20歳で代表にデビューしながらW杯とは縁がなかった。覚醒のきっかけはスペインへの移籍。15年にエイバルに加入すると、小規模クラブの1部リーグ定着に貢献、同国で安定的な成績を収めた初の日本選手となった。

 代表合宿でも常にボールと戯れて離さない。その表情は「セクシーフットボール」で全国を席巻した滋賀・野洲高時代のまま。かつてのサッカー少年が、世界の舞台で輝きを放った。 

  (対比地貴浩)

中日新聞 東京新聞

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