6月19日

「サッカー小僧」勝利に切り込め 30歳・乾選手、初のピッチへ

コロンビア戦に向けて調整する乾選手(手前)。右は岡崎選手=18日、サランスクで(岩本旭人撮影)

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 生粋の「サッカー小僧」が30歳にして、ワールドカップ(W杯)のピッチに立とうとしている。19日にコロンビアとの初戦を迎える日本代表のMF乾貴士=ベティス。直前の壮行試合で2ゴールを挙げ、不振が続いた日本の救世主に。追究してきたドリブルでチームを前へ引っ張る。 (河北彬光)

 キャンプ地カザンであった十七日の練習後。「みんな日本にチャンスがないと思っているかもしれない。それを覆して、見返したい気持ちがある」。いつもの、歯切れの良い口調で心境を語った。

 ボールを持つと目の前の相手から逃げず、ゴールへ向かっていく。果敢なプレースタイルは、少年のころから変わらない。

 滋賀県立野洲高校時代。部活や試合の後も居残ってドリブル練習に明け暮れた。「常にボールを離さない、漫画みたいな子」と恩師の山本佳司総監督(54)。二〇一五年にスペインへ移ると得点力に磨きを掛けた。

 W杯目前の五月、右太ももを負傷した。脚が曲がらないほどの打撲。代表の国内合宿で明るく笑顔を振りまいたが、本心は違った。「もう、あかんかも」。高校時代から体の管理を任せている個人トレーナーの樫野哲也さん(42)にLINE(ライン)で漏らした。本人の元へ駆け付けた樫野さんは「粘ろう。頑張りどころや」と背中を押した。

 代表枠に滑り込むと、今月十二日のパラグアイ戦で先発の好機が訪れた。ドリブルで切り込んで右足を振り抜いた一点目は、練習で繰り返してきた得意の形。逆転弾も決め、四月の監督交代以来、初の勝利をもたらした。樫野さんはテレビ越しに「三十歳になっても負けず嫌いは少年のまま。貴士なら本番でも、やる」と感じた。

 恋い焦がれてきた舞台は目の前に。「三十歳で初めてのW杯は遅いかもしれない。選んでもらった分、しっかり返さないと」。前を見据えて言い切った。

中日新聞 東京新聞

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